阪神との強化試合で快勝した侍ジャパンだが、打線が当初の構想から大幅に変わる可能性が出てきた。スポーツ紙記者はこう語る。

「鈴木誠也(カブス)が左脇腹痛で出場辞退し、右の大砲として山川穂高(西武)が期待されたが、一塁手や指名打者でスタメン起用された壮行試合の4試合では13打数無安打。3月6日の阪神戦でも途中出場し2打数2三振と内容も良くない。もともと好不調の激しい選手で、状態が良くないと取り戻すまでに時間がかかる。短期決戦のWBCで状態が良くなるのを待っている余裕はない。スタメンは厳しいのではないか。

 その山川より重症なのが山田哲人(ヤクルト)です。壮行試合4試合で13打数無安打と結果を残せず、打撃フォームが完全に崩れている。今の状態では復調の兆しすら見えない。二塁のスタメンは牧秀悟(DeNA)を起用するのが妥当ではないか」

 山田は国際舞台での強さを評価されて選出されたが、シーズンでは昨季打率.243、23本塁打、65打点、10盗塁と満足できる結果を残していたわけではない。リーグワーストの140三振と速い球にバットが空を切る場面が多く見られ、トリプルスリーを3度獲得した全盛期に比べると、輝きを失っている。今年は打撃フォーム改造に踏み切ったが、壮行試合での打席ではタイミングが取れていないようにも見受けられた。7番・セカンドでスタメン起用された阪神との強化試合でも4打数ノーヒットに終わり、今の状態から本戦までの短期間で劇的に改善するかどうかには疑問符がつく。
 そうしたなかで侍ジャパンに合流した大谷翔平(エンゼルス)、ヌートバー(カージナルス)、吉田正尚(レッドソックス)のメジャー組を1~3番にはめ込む可能性が高いと見られている。注目されるのは4番だ。村上宗隆が壮行試合5戦すべてに4番打者として出場したが、16打数2安打と本調子にまだまだ及ばない。対照的に、輝きを放っているのが岡本和真(巨人)だ。3月4日の中日戦で同点の7回に柳裕也のカットボールを振り抜き、左翼席へ決勝ソロを放つなど、16打数5安打で打率.312、6打点とバットが振れている。

「岡本は一塁、三塁のほか左翼にも挑戦するなどチームに役立とうという献身的な姿勢が見える。昨年は巨人で4番を剥奪されましたが、5年連続30本塁打をマークするなど長距離砲としての資質は疑う余地がない。岡本の強みは守備が巧いことです。昨年も三塁で2年連続ゴールデングラブ賞を獲得している。1点を争う試合では守備力が鍵を握ります。村上は侍ジャパンでも三塁しか守っていませんが、守備陣全体の安定感を考えれば岡本が三塁、村上を一塁に回す布陣を検討してもいいと思います。4番も村上に固執する必要はない。4番・岡本、5番・村上の選択肢も出てくる」(民放テレビの関係者)

 昨年の成績が先入観になりがちだが、現時点の各選手のコンディションを見極めることが重要であることは言うまでもない。村上の状態がWBC本戦でも上がらないようであれば、トーナメント制の準々決勝以降は岡本を4番に据える可能性が考えられる。スポーツ紙デスクはこう指摘する。

「近藤健介(ソフトバンク)が好調なので1番に据え、大谷を3番に据える打順も面白い。4番・吉田、5番・岡本、6番・牧の並びで、村上を7番に置いたら相手バッテリーは気が抜けないでしょう。好調な選手を使うというシンプルな采配も有力な選択肢だと思います」

 初戦は3月9日の中国戦。残された時間が少ないなか、栗山英樹監督はどのような決断を下すか。