迫る物流「2024年問題」 運転手不足に懸念、業界対応急ぐ 荷物3割超運べず

 トラック運転手の時間外労働に法律で年960時間の上限が課される2024年4月まで1年に迫った。

 物流業界では、慢性化している運転手不足がさらに深刻となり、各地で荷物が運べなくなる事態が懸念されている。各社は「2024年問題」への対応を急いでいるが、課題は山積している。

 野村総合研究所は、この問題により30年に予想される国内の荷物量のうち35%が運べなくなる可能性があると試算。物流網を維持するには「料金割り増しや運送頻度低下が生じる恐れがある」と分析する。背景には、電子商取引(EC)市場拡大で荷物量が増える一方、人口減少や労働環境の過酷さで若手の運転手確保が年々難しくなっているという事情がある。

 燃料費高騰などのコスト増も重なり、物流業界の経営環境は厳しさを増している。特に危惧されているのはトラック輸送の下請けを担う数多くの中小企業へのしわ寄せだ。日本の場合、トラック運送事業者の99%超を中小が占めている。

 最大手のヤマトと佐川急便は「価格への反映が遅れている」などとして、4月にそれぞれ宅配の基本運賃引き上げに約5年半ぶりに踏み切る。こうした価格転嫁の動きが、中小の運転手の待遇改善につながるかが物流課題解決への焦点となりそうだ。