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280 名前:それでも動く名無し[] 投稿日:2023/03/31(金) 15:39:45.24 ID:ftWVEGgu0
小学生時代に先生を論破した時の話。

あの頃、俺は調子に乗っていた。
この年に受けたIQテストで理論最高値を叩き出した俺は、クラスのみんなから「1組のアインシュタイン」だの「3代目尊師」だのと呼ばれ、ちょっとした人気者になっていたのだ。
その日も授業に飽きた俺は、ゲーム感覚で先生の言葉尻を捉え、揚げ足を取って遊んでいた。
それが自分の運命を変えることになるとも知らずに。

俺みたいなガキに論破されたのが、よほど悔しかったのだろう。
真っ白なチョークを握り締めたまましばし呆然としていた先生は、突然黒板に「E=mc^2」と殴り書きすると、俺に向かって一言「解け」と言い放った。
相対性理論の公式だ。
後で知った話だが、どうやら先生は大学で物理学を学んでいたらしい。
いくら「1組のアインシュタイン」と呼ばれるこの俺でも、自分の何倍も生きている大人に知識で敵うわけがない。
どうせIQで勝てないからこうやって知識で勝負を挑んでくるんだ。
そう考えると急にむしゃくしゃしてきた俺は言ってやった。

「“先生” っていうけどさ、俺より “先に生まれた” だけじゃん」

次の瞬間、俺の席に走り寄ってきた先生は、声を上擦らせながら「相撲やるぞ」と言うと、俺の服を掴んで冷たい床に叩き付けた。
仰向けになった俺の額には、馬乗りになった先生の目から涙がポトポトと滴り落ちていた――。

その後のことはよく覚えていない。
後日、俺の報告を受けた校長によって先生は吉野の学校へと左遷されていった。
先生が死んだのを知ったのは、それから一ヶ月後のことだった。

あの日から俺は片時も忘れたことはない、俺の額を濡らした先生の涙と、そしてチョークの粉で掠れた「E=mc^2」の文字を。
俺より先に生まれ、そして先に死んでいった先生、どうか天国で見守っていてください。
俺は今日、近畿大学に入学します。
あの日答えられなかった「E=mc^2」を解くために――。