0001それでも動く名無し
2023/04/20(木) 01:13:26.62ID:rTcIVam+0選手を好き嫌いで選んでいる──これは、コロナ禍に指揮を執り、かつチームを優勝に導けなかったすべての監督が受けた批判といえるかもしれない。外部から見えるのはその選手を使った、あるいは使わなかったという結果のみ。なぜそういう決断に至ったかという部分が、そっくり抜け落ちてしまったからである。
矢野ももちろん、そうした批判と無縁ではいられなかった。
「言われましたねえ、矢野は梅野が嫌い、矢野は坂本を贔屓してる(笑)。まあ彼らどうこうはともかく、一般論として、ぼくも人間ですから自分の中に好き嫌いがあることは否定しません。少なくとも、ゼロではないかもしれない。ただ、ぼくの中の好き嫌いと、自分たちの野球を貫くのとどちらを優先させるかと言えば、そんなもん、考えるまでもない」
ではなぜ、彼はワンバウンドを止める能力や盗塁阻止率、さらには打撃の能力に至るまで、数字上では明らかにチームナンバーワンのキャッチャーだった梅野隆太郎を、坂本誠志郎と競わせる形をとったのか。
「ぼくはキャッチャーというポジションには、見える能力と見えない能力があると思っているんですが、梅野の場合、見える能力では、他のキャッチャー、たとえば坂本と比べても上回ってる。じゃあ坂本はどうなのか。ピッチャーに対する準備の力であったり、声のかけ方であったり、あるいはサインを出す上での根拠であったり、そういう見えない部分での能力がめちゃめちゃ高いんです。同じポジションをやってきた人間からみても、あいつは凄い」
よく、キャッチャーは“女房役”とたとえられることがあるが、矢野の目に映る梅野は言ってみれば、引っ張っていくタイプで、坂本は徹底的に尽くすタイプの女房だった。それぞれのタイプに優劣をつけるつもりなど、矢野にはなかった。彼が狙ったのは、タイプの異なるキャッチャーを競わせることで、それぞれが自分に足りない一面を自覚してもらうことだった。
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