颯の持つ自己肯定感の危うさには、
かなり早い段階から気づいていた。
能力全般がある程度高く、適応力もある。
努力もほどほどにでき、人の意見も聴ける素直さもある。
加えて、周囲に愛されてきたであろう天真爛漫な性格。
しかしそのすべてが中の上。
一般人としては高くとも、
それ一本でこの業界を渡っていけるほどではない。
なにより、それらの能力のせいで、彼女は挫折を知らない。
苦難を乗り越えた経験のないまま「なんとなく頑張ったらできた」
という空っぽの自信だけが積み重なっていた。
なんの根拠もないまま膨らんだその自信は・・・・・・
持ち前の能力で越えられない本物の壁にぶつかったとき、
あっけなく壊れてしまう。その予感があった。
だから、準備をした。支えになる仲間を作り、経験を積ませて、少しずつ、自分と向き合う準備をさせてきた。
今が・・・・・・そのときだ。