大谷はヌートバーとの対戦を“兄貴”として楽しんでいたね。初回の第1打席、結果は空振り三振だったけど、投じた6球の中に速球、スイーパーに加え、スプリットを交えた。スプリットを初回先頭打者から投げるなんて、ここ最近には見られない姿だった。

これって、ダルビッシュとマエケンの対戦を思い出す。10年5月15日の広島対日本ハム戦(マツダ)。ダルビッシュは前田に対して、「これからの日本球界を託す」と自身の持っている全球種を投げる10球を見せたと聞いた。大谷もそんなふうに、ヌートバーに大サービスしたように映った。「今の俺が投げる球全部見せてやる。これからの打席での糧にしろよ~」みたいな。

カージナルスがスライダーを狙っていた。狙われていることが分かれば、よりいいところに投げようと、力んで抜けた球も多かった。とはいえ、ヤマを張ってもファウルになったり、並の打者では簡単に打てるスライダーじゃない、ということだね。

肘の下がり具合で球種が分かると言っても、縦横へのスイーパー、曲がりが小さめのスライダー、ツーシーム―と変幻自在。15アウト中奪三振13と、ただで転ばない大谷が見られた。楽しみなのは次回。これだけスライダーを狙われて、組み立てを変えてくるか、というところかな。(野球評論家・高橋尚成)