0001それでも動く名無し
2023/05/17(水) 12:14:07.27ID:TvoxUj8Kd同成果は、京大 基礎物理学研究所(YITP)の髙橋一史特任助教、リスボン大学の南辻真人研究員、工学院大学の本橋隼人准教授らの研究チームによるもの。詳細は、日本物理学会が刊行する理論物理と実験物理を扱う欧文オープンアクセスジャーナル「Progress of Theoretical and Experimental Physics」に掲載された。
アインシュタインの一般相対性理論はこれまでのところ、標準的な重力理論として広く認められているが、その修整や拡張を唱える研究者も少なくない。同理論は低エネルギー領域での有効理論であって、高エネルギー領域では修正されるべきとするものや、重力理論の検証にあたっては一般相対論との比較対象として拡張した理論を考えるべきといったものなど、多様な拡張重力理論が提唱されている。
一般相対論は時空の幾何学を司る計量テンソルを用いて重力を記述する理論であり、数学的には「計量テンソルのみで記述される理論のうち運動方程式が(高々)2階微分方程式となるような最も一般的な理論」という特徴づけが可能だとする。実は、一般に高階の運動方程式を持つ系は「オストログラドスキー・ゴースト」という不安定な自由度を持っており、その意味で「運動方程式が2階となること」は合理的な要請であるといえるという。
これに対し、拡張重力理論は一般に計量以外の自由度を含むが、その多くは計量テンソル以外にスカラー場を含んだ拡張重力理論(スカラーテンソル理論)として実効的に記述されることが知られている。一般相対論に対応して、スカラーテンソル理論中で2階の運動方程式を持つ最も一般的な理論もすでに知られており、それは今日では「ホルデンスキー理論」と呼ばれている。なお同理論自体、多数のスカラーテンソル理論を内包した一般的な理論の枠組みと見なすことができるとする。
広大なスカラーテンソル理論の理論空間を調べるにあたっては、場の変換を通じて異なる理論同士がどのように結びつくかを調べることが有用だという。そうした変換として、従来はスカラー場の1階微分までを含んだ計量の可逆変換である「disformal変換」が知られていた。変換が可逆であるとは、変換前後の理論を自由に行き来できるという意味だとする。同変換を用いると、前述の高階微分に伴う不安定性を回避しながら、ホルデンスキー理論をさらに拡張することが可能だ。一方で、スカラー場の高階微分を含みつつ変換を可逆にすることは長らく不可能と考えられていたという。