頭の中は真っ白。それでも捕手の吉永幸一郎のサインにうなずき、初球を投げ込むと、一塁方向から「クイックぐらいできんのか!」と怒号が飛んできました。声の主は現ソフトバンク監督の藤本博史さん。もう開き直るしかありません。140キロ台の直球で押し、何とか秋山さんを三邪飛、清原さんを左飛に料理。イニングまたぎとなった6回も石毛宏典さん、トレンティーノに連打を許しながら計1回2/3を無失点で切り抜けました。

 もう一つ忘れられないのが、プロ初先発となった6月13日のロッテ戦です。午後1時半開始で舞台は本拠地の福岡ドーム(現ペイペイドーム)。言い渡されたのは前日12日の試合中で、プロ12試合目の登板でしたが、やはり緊張しました。

 そんなドキドキの初先発を前に、ベンチで選手たちの中から心強い声が上がりました。声の主は藤本さん。「今日は初先発の田畑だから、絶対に打って勝たせよう!」。監督となった今も選手から慕われているのは、こういう気遣いができる人だからでしょう。


【田畑一也コラム】「絶対打って勝たせよう」プロ初先発戦で藤本博史さんが有言実行の一打
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