ドラフトに向けて、立浪監督は情報網を駆使し、動画をかき集めて候補者を精査していた。その中に明星大・松井颯の名があった。
秋のリーグ戦に大塚投手コーチを派遣。巨人がそうしたように、中日も育成選手だっただろうが、指名する寸前だった。

高校ではエースではなかった。首都大学リーグでは入学から卒業まで2部だったが、育成ドラフトでプロの門をくぐった。
開幕から2カ月で支配下を勝ち取り、初登板初勝利。ゆっくりと前へと進むカメを思わせる、素晴らしい話だ。
しかし、そんな物語に拍手を送る余裕は、僕にはない。
一歩間違えば竜のユニホームを着ていたはずのルーキー右腕。お立ち台での彼が、まぶしくて直視できなかった。
どうして打てない。なぜ捕れない。どうすれば勝てる…。答えはない。
起爆剤やらカンフル剤が入っていたはずの箱など、とうの昔に使い果たして空っぽである。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7e87199292a891de7702576e5584fc7c904d2d95