>>122
BBO というのは「メタホウ酸バリウム」の結晶で,化学式が BaB2O4 だから通称 BBO である.BBO には結晶構造が複数あり,α相,β相と区別される.どちらも複屈折という光学的に面白い性質を持つので実験によく使われるが,β-BBO にはさらに面白い性質がある.ここにレーザー光を照射すると非線形光学的な現象によって二つの光子を同時発生するのである.入射した一粒の光子が持っていたエネルギーをちょうど半分ずつ分け合った光子である.波長が伸びて光の色も変わるわけだ.この現象は自発パラメトリックダウンコンバージョン(SPDC)と呼ばれている.

このとき発生する一対の光は一方が縦偏光,一方が横偏光になっているが,複屈折性によって二つの方向に分かれて出てくる.複屈折というのは偏光の向きによって結晶中を伝わる光の速さが違うために起こるもので,屈折率がそれぞれ違うので,それぞれが違う方向へ出ていくのである.実は BBO だけではこんなにしっかりと方向を分けることができないので,この実験では BBO の直後にさらにグラン-トムソン-プリズムと呼ばれる別の複屈折プリズムを置いて,それぞれをしっかり別方向へと飛ばしているが,この図には描いていない.