原監督はよく相撲に例えて「胸と胸を突き合わせて」と表現する。だが、この日は、原監督が引いたために、つかんでいたまわしを手放してしまった。

　６回１死一塁で秋広にバント（投飛）。８、９回ならまだ分かるが、３番で起用している打者へのバント策は、ベンチの「弱気」としか感じなかった。かりに成功していたとしても、岡本和は歩かされる。それほど大城卓と勝負させたかったのか。

　桐敷を打ちあぐねていたものの、リードしていた。横川が見事な攻めの投球だったので、１―０というスコア以上に巨人が押していた。だが、巨人が「引いた」ことで、阪神が土俵中央に。その裏、負けているのに、岡田監督は無死一塁で桐敷に代打を送らなかった。「巨人が嫌がっているなら続投させてやれ」という思いもあっただろう。

　さらに、横川を６回限りで交代させたことが疑問。横川は６回、桐敷のバントを思い切って二塁に送球してアウトにした。勇気あるフィールディングだった。次の近本は３ボールから抑えた。まだまだ投球も精神状態も充実していた。横川に白黒をつけさせるべきだった。ベンチにしか分からない交代の理由があるのかもしれないが、巨人の余裕のなさを感じた。

　もっと言えば、秋広は８回、３ボールからヒッティングした。信頼しているなら、６回も強攻でいいだろう。９回は大城卓に代打を送った。６回のバントは大城卓勝負の意図ではなかったのか…。試合を通してのストーリーが見えなかった。クラシックユニホームを着用しての伝統の一戦だったが、巨人軍らしくない戦いだった。（掛布　雅之）

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