毒島さんとは、ほとんど話す機会はなかったが、僕にとっては縁のある偉大な選手やった。詳細は忘れたけど、阪急時代にベンチ前に並ばされて、毒島さんの三塁打の記録の表彰に拍手を送ったことがあった。毒島さんの持っていたプロ野球歴代最多の通算三塁打数は「106」。「それぐらいやったら狙えるんちゃう」と正直思った。後に立浪に抜かれるまで通算二塁打数のプロ野球記録も作ったけど、数は意識していなかった。でも、三塁打の記録は狙って「115」という記録を残すことができた。

 その記録に近づくような選手が現れたら、2位の毒島さんの名前もランキング表などに出てくるんやけどな。僕は右中間への当たりは常に最初から三塁打を狙っていたし、左中間を破った打球でも隙あらば狙っていた。今は積極的に三塁打を狙う選手が減っている。僕らの時代より球場が広くなっているし、もっと増えてもいいんやけど。現役最多が巨人・松田宣浩の「67」では寂しい。1年で10個で10年続けたら100個。他の記録よりは狙いやすいと思うけどな。

 最近の野球中継でアナウンサーがよく使う「スタンディングダブル」という言葉もよくない。滑り込まずとも楽々二塁打の時に使う表現やけど、僕が気に入らんのは、二塁ベース手前でスピードを緩めてしまうこと。カッコばかりつけて三塁を狙うつもりが最初からない。これでは三塁打の数は増えるはずがない。

 ホームランは「野球の華」と言われるけど、球場観戦でファンが盛り上がるのは三塁打のシーン。二塁を回った時に、ワーッと歓声が上がり、中継プレーも守備の見せどころとなる。三塁打には、テレビ観戦では伝わらない面白さがある。もっと貪欲に三塁を狙ってほしい。「三塁打の毒島」と呼ばれた大先輩の死去で、改めて思う。