科学的な意思決定の方法とは、こうした科学的な定量分析に基づいた意思決定のことを指します。物事を「好き・嫌い」で決めるのではなく、数字に基づいて決めるのです。
反論するにしても、コンピューターシミュレーションに基づいた説明が求められます。そのため、各国政府や研究機関は、しのぎを削ってシミュレーション合戦をしています。

にもかかわらず、日本は相変わらず「昭和型の予算分捕り合戦」を続けており、同じ土俵に立っていません。いわばルールのない意思決定です。
例えば、日本政府は、石炭火力発電にアンモニアを混ぜて燃焼させる「ゼロエミッション火力」や、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術に多額の補助金を出しています。しかし、先ほどのグラフを見れば費用対効果が低いことがわかります。

私はこうした技術の開発に反対しているわけではありません。技術そのものは開発すればいいと思いますが、それらに政府の補助金をつける正当性があるのかと疑問を呈しています。そして最大の問題は、これらの補助金の配分が、どのように決まったのかわからないということです。

このように日本のエネルギー政策は、意思決定の仕方そのものに大きな問題を抱えています。重要なのは、何を決めたかよりも、どう決めたかです。それがわからなければ反証可能性がありません。つまり、科学的ではないのです。