0001それでも動く名無し
2023/06/12(月) 19:23:21.68ID:jK1xdabUM4月。菅野はシーズン開幕後もジャイアンツ球場にいた。「今、どういう風に自分が投げているか分からない」。久保投手コーチに打ち明けたのは頭と体の断層だった。頭で描くイメージと、動きに溝ができていた。3月に訴えた右肘の張りは治っても、出力が戻らない苦悩。「足を上げて、体重移動して、腕を振ったら、そこに行く。そういう感覚でずっと野球をやってきたんです」。思い出そうにもシンプルに、そして感覚的に投げていたからこそ、思い出せない。意外な事実に、驚きの表情を見せる久保コーチにありのままをさらけ出した。
久保コーチと始めた作業は、かつての自分を取り戻すことだった。「昔はこうやって投げていたんだよ」。見せられたタブレットに映る自分。3度の最多勝、2度の沢村賞を獲得したかつての姿に「新しいというより、少しでも昔の形に近づこう」と曲がっていた右足を修正。ジャイアンツ球場右翼ポール際にある高低差5メートル以上の坂道では、上からも下からもキャッチボールし、左足に体重を乗せる感覚を培った。その坂道をじっくり1歩ずつ登りながら、前に力を伝える動きを体に染み込ませた。地道な1歩がようやく実を結んだ。