風俗嬢に説教してそう

「お菊、お前は強い娘なんだな。わたしとは大違いだ。ところで、仕事はなにしている?」
 わたしは、お菊の背中に微笑む。 

「おとっつあんには内緒なんですけど……私、朝から夕方まで遊郭で働いているんです。夕方にはおとっつあんが畑仕事から帰ってくるので。おとっつあんには心配掛けたくないんです。借金を返すには、それしかないと思って。でも最近、変なお客さんに付け回されてて、困ってるんです……こないだ、そのお客さんが家まで来ちゃって、おとっつあんが追い払ってくたから良かったけど。私、怖くて……」
 お菊が泣き崩れる。
 お菊の涙の粒が、畳に染みる。

「お菊。キミは充分に、父親に心配を掛けている。仕事で知らない男に抱かれるのを、父親が知ったら、どんなに悲しむか。お菊は、そんなことを考えたことがあるか? お菊のお母さんが、お腹を痛めてキミを産んだ。簡単に、自分の身体を許すな! どんなに時間が掛かってもいい。ちゃんと真面目に働いて、父親の借金を返すんだ。父親は真面目に働いているのに。そこまでしてキミは、父親が知らないところで迷惑を掛けてまで、寄り道するのか? それこそ、親不孝者だ」
 わたしは、お菊に強く優しく語りかけた。

「!? す、すいません。信二さんの言葉で目が覚めました。私、真面目に働きます」
 お菊が涙を拭いながら、鼻を啜る。