人間はひとくきの葦にすぎない。

自然の中で最も弱いものである。

だが、それは考える葦である。

彼をおしつぶすために、宇宙全体が武装するには及ばない。

蒸気や一滴の水でも彼を殺すのに十分である。

だが、たとい宇宙が彼をおしつぶしても、人間は彼を殺すものより尊いだろう。

なぜなら、彼は自分が死ぬことと、宇宙の自分に対する優勢とを知っているからである。

宇宙は何も知らない。

だから、われわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある。

われわれはそこから立ち上がらなければならないのであって、われわれが満たすことのできない空間や時間からではない。

だから、よく考えることを努めよう。ここに道徳の原理がある。


パスカル『パンセ』(第6章)より