安倍氏銃撃1年 山上被告裁判「今年は100%ない」 初公判、来年後半以降か 不審物騒ぎで公判前中止
安倍晋三元首相銃撃事件の刑事裁判は、山上徹也被告(42)=殺人罪などで起訴=が公の場で初めて事件について語ると見込まれながら、発生から1年を迎える現在も始まる見通しが立っていない。裁判員裁判での審理に向けて6月に予定されていた第1回公判前整理手続きも延期された状態で、初公判は来年後半以降になるとの見方が出ている。

【写真】銃撃された安倍元首相が最後に握っていた傷のついたマイク

「はっきりとしているのは、今年中に裁判が始まることは100%ない」

そう断言するのは山上被告の弁護団の一人。弁護団は具体的な弁護方針を明らかにしていないが、現在は検察側の証拠開示を受けながら、書類などの読み込み作業を続けているという。

法曹3者による初の公判前整理手続きは6月12日に奈良地裁で予定され、非公開ながら山上被告も出席するはずだった。ところが、地裁に届いた不審物騒ぎで急遽(きゅうきょ)中止になり、延期後の期日も決まっていない。山上被告は「自分が出頭することで騒ぎが起こった」として、今後の手続きに参加するかどうか決めかねているという。

裁判員裁判の対象事件では初公判の前に、公判前整理手続きで争点や証拠を絞り込み、誰をいつ証人尋問するかなど判決までの審理内容を詳細に決める。

最高裁によると、整理手続きの平均期間は令和3年、10・4カ月。仮に7月中に整理手続きが始まり、平均的な期間を要したとしても、終了するのは来春ごろとなる。

ましてや、元首相が街頭演説中に被告の手製銃で襲撃された歴史的な事件。重大性をかんがみると弁護団も証拠の精査に慎重にならざるを得ないとみられ、関係者は「(初公判は)来年の前半は難しいかもしれない」との見方を示す。

検察側は山上被告を起訴する前に約半年間にわたって鑑定留置し、刑事責任能力を問えると判断した。母親の信仰する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みが安倍氏に向けられた「飛躍」や、宗教2世として困窮した特殊な成育環境を踏まえると、弁護側も精神鑑定を実施し、責任能力を争点化することも選択肢の一つになりうる。

ただ、元刑事裁判官で法政大法科大学院の水野智幸教授(刑事法)は「公判の主な争点は、動機に同情の余地があるかどうかの情状面になるだろう」と推測。宗教2世の問題は刑事責任能力の有無よりも、量刑を判断する上で「情状酌量」としていかに考慮するかの議論になる可能性が高いとみている。
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