――『スタジオジブリ物語』でも絵コンテへの言及が多いのですが、なかでも宮﨑駿監督作品は、絵コンテを完成させないままスタッフによる作画が始まることが多く、非常に印象的です。ドキュメンタリーを観ていても、だんだん作画が追い付いちゃって、監督の絵コンテ待ちみたいになってる場面も……

藤本 ありますよね(笑)。『ONE PIECE』の尾田先生が「宮﨑監督は絵コンテをマンガ連載のように切っていく」と仰っていたんですけれど、僕も本当にその通りだと思っています。

林 締切がどうこうっていうスケジュール面よりも、「仕事を発生させなきゃ」っていうプレッシャーがすごそうですよね。マンガ家のアシスタントどころじゃない人数のアニメーターを抱えているので、あの重圧は相当なものだろうなと思います。



――いわゆる「異世界転生もの」の異世界って、基本的にはRPGの世界が根底にありますもんね。

藤本 新海誠監督が日本を舞台に作品を作り続けているのって、日本を舞台にした作劇が、一番自分が戦える領域だと考えているからだと思うんですよ。それでいいと思うし、ゲームのような世界もそれはそれで間違っていない。

ただ、教養的な面で「宮﨑駿監督みたいに作品をつくれる人は今後いなくなるんだろうな」とは思います。もちろん取材をすればそういう作品づくりもできるとは思いますけど、実感として、そういうお金をかけた取材旅行ができる人はもういなくなるだろうなって感じがします。