これがプロ視点やね

――藤本さんは映画好きとしても知られていますが、映画ファン目線から見たときに「ジブリ作品」ってどういう特徴があると思いますか?

藤本 「実は作家性が強い作品ばかりなんだけど、テレビ放送を通して国民的作品になり過ぎた結果、みんながその作家性に気が付きづらくなっている」というところですね。
例えば『サザエさん』を映像的に見ると、カメラが常に三人称視点で奇抜な構図がないという特徴があるんですけど、そんなことは誰も考えないですよね。

――考えないですね。

藤本 リアリズムの観点でジブリ作品を観ると、セリフにはそこまでリアリティーはないものが多いですよね。
現代においては誰も言わないような「~~だわ」みたいな女性口調も多いですし。とくに宮﨑駿監督作品の場合、登場人物みんなが宮﨑駿チックな人物になってます。
例えば、キャラクターがおもしろいことを言った後に、それを受けた女性が「えっ、○○? アハハハハ」って、相手が言ったことを反復して精査してから笑ったり。

――なんとなく当たり前のものとして受け止めてましたが、言われてみれば、かなり特徴的な受け答えですよね。

藤本 僕も含めてなんですけど、みんなそういうジブリの作家性がよく分からなくなっていて、
今改めて作品の文法とか作劇を語ろうとしても、けっこう難しいんですよね。そして、そこがおもしろいと思います。
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