2030年7月神宮での3連戦。去年シーズン途中に故障で戦線を離脱したエース戸郷の復帰戦、シュート回転気味のストレートのあの伸びを信じきれなかった。
あれだけ苦楽をともにしてきた後輩の底力を信じてやれなかった。代打で登場した青木宣親。右打者なら躊躇なく泳がせて三振にとりにいっていただろう。
けれど、48歳になってまだ現役で活躍する大ベテランがその逃げる気持ちを見逃すはずがない。わかっていたはずなのに。打球は歓声のなかに消えた。その歓声が試合を決めた。
そこまで全盛期を思い出させる見事な投球だっただけに、キャッチャーの大城の心を折った。これは試合の流れどころか、ペナントの流れすら左右してしまう。悔しそうに下唇を突き出してスコアボードを眺める戸郷の背中が遠い。