京都市から若者と子育て世代が離れていく理由、インバウンド誘致に奔走も市民の流出止まらず

京都市の人口減少が耳目を集めている。総務省の住民基本台帳に基づく人口で、令和2年、3年と年間の減少数が2年連続で日本一となったためだ。千年の都で、いったい何が起きているのか。

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 次に世代別の人口流出状況をチェックしよう。ここでは2つの世代に注目した。年代別の社会動態を示した下のグラフ(日本人のみ対象)に注目していただきたい。上部は転入、下部は転出状況を示している。

① 子育て世代の流出 
 25~39歳の子育て世代の転出超過が顕著である。同時にこの世代の子どもである0~4歳も大幅な転出超過となっている。結婚期や子どもが幼少時に、近隣の滋賀県(大津市など)や京都府内の城陽市や宇治市などに転出するケースが多い。

 その背景にあるのは、インバウンド増加に伴うホテル建設ラッシュによる市内の地価上昇で、住宅コストが高騰しているためだ。この10年で市内中心部の地価は2倍超に高騰。新築マンションで6000万円から1億円といった水準になっている。一方、JRで京都駅から3駅、13分程度の大津市内のマンション(68~84平方メートル)の最多販売価格帯は3700万円台にとどまっている。子育て世代が転出するのも当然だ。

② 大学卒業生(就職世代)の京都離れ
 子育て世代よりも下の20~24歳は、日本人だけでみても数百人規模の転入超過だ。就職を機に京都にUターンした若者が一定数いるうえ、全国各地から「京都企業」に就職した若者が多いということだろう。ただし、本来ならこの世代の転入超過をもっと増やせる可能性があるのだ。どういうことか。

 京都は全国一の学生の街である。令和3年度学校基本調査の京都市分を市がまとめた結果によると、市内には大学等(大学院、短大を含む)が37あり、学生数は14万8218人と人口の1割強に達する。毎年3万5000人程度の卒業生が社会に出て行くということだ。

 問題は、その進路先である。京都大学、同志社大学、立命館大学といった主要大学の卒業生のうち、京都の企業、自治体などに就職する学生はほんの一握りにとどまっているのだ。

 立命館大学が公開している2022年春卒業生の本社所在地別就職者数を見ると、5063人中、京都府内はわずか395人(7.8%)しかいない。東京都は2315人(46%)、大阪府909人(18%)。つまり、就職者の64%が東京、大阪の企業に集中しているのが現実だ。

 これは同志社大学も同じである。2021年9月、2022年3月卒業・修了生5057人の就職先で、京都府は403人(8.0%)。もっとも多い東京都は2507人(49.6%)で、次が大阪府の971人(19.2%)。ほぼ7割が東京、大阪の会社を選んでいるのだ。

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この10年ほどの間、市はインバウンド誘致に奔走した。その結果、観光客は大幅に増えたが、今度は市民が「京都離れ」を起こしてしまった。子育て世代や若者世代の流出を食い止めなければ、10年後、20年後、人口も子どもの数も減り続けていくおそれがある。1200年の歴史をもつ古都が、住民の街であり続けられるのかどうか。今まさに正念場を迎えているといってもいいだろう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8140de7787f42bc2bc96ca6d7a5f71608d92a637