車をわざと傷つけるなどして自動車保険の保険金を水増し請求していたとされる中古車販売大手のビッグモーター(東京都港区)で、違法な働き方や不当な人事が横行していた疑いがある。元社員への取材や、同社の特別調査委員会の調べで明らかになった。元社員の男性は「上からの圧力が強く、刃向かえば処分されるか、異動させられる環境だった」と打ち明ける。

 ビッグモーターは事故車の修理を請け負った際、車を損傷させたり、不要な部品交換をしたりして、損害保険会社に修理費を水増し請求する不正が表面化。損保の求めで同社が設けた特別調査委は、現場が経営陣の言うがままに従い、忖度(そんたく)する「いびつな企業風土」があったと指摘している。

 関西地方の店舗で2021年まで中古車売買の営業担当として勤務していた20歳代の男性が、朝日新聞の取材に応じた。男性には、買い取りと販売それぞれ月5台がノルマとして課されていた。達成できないと、上司から「昼飯も食べるな」と厳しく叱責(しっせき)されたという。

 一方、売り上げが伸びれば給与にも反映され、手取りで月100万円もらったと話す同僚もいたという。

 現場を苦しめていたのは「環境整備点検」だった。男性によると、副社長らが全国の営業店舗を月に1回程度回り、掃除や整理整頓が行き届いているかなどを厳しくチェックする。前日から掃除を始め、終わるのは早くても夜12時、遅ければ午前2〜3時にもなる。労働時間に含めることは許されず、「サービス残業」扱いだったという。

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