政府クラウドの「国産」後押し、選定要件を緩和へ…現在は米IT大手のみ
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 デジタル庁は、自治体がもつ個人情報などを管理する政府クラウドについて、提供事業者の選定方式を見直す方針を固めた。現在は米IT大手のみ選定されているが、日本企業も提供できるようにする。クラウドサービスは、国民や産業などのデータ管理に不可欠なインフラとして経済安全保障上の重要性が高まっており、「国産クラウド」の導入を後押しする。

 政府クラウドの提供事業者は、デジタル庁が公募して選定している。デジタル庁は8月下旬にも新たな選定方式を公表し、2023年度の公募を始める。10月下旬にも提供事業者を決める見通しだ。

 現在、政府クラウドには安全対策やデータの保管などで高い要件が定められており、提供企業は、約330件ある選定要件を1社で満たす必要がある。

 世界規模でクラウドを展開している米国企業しか1社で満たすことはできず、22年度の公募で選ばれたのはアマゾン、マイクロソフト、グーグル、オラクルの米国企業4社だった。日本企業で公募に手を挙げた社はなかった。

 選定要件を巡り、日本企業から見直しを求める声が相次いでいた。経済安全保障上、クラウドを自国企業で賄う必要性も高まっており、デジタル庁は日本企業が提供できる環境を整える必要があると判断した。
 今後、データ管理や認証などの中核機能を自社で提供していれば、他社のサービスを組み合わせて要件を満たすことを認める。データ分析などの機能は他社のサービスで補うことなどが可能となる。

 選定方式の見直しで、日本企業が提供事業者に選ばれる可能性は高くなる。さくらインターネットやインターネットイニシアティブ(IIJ)などが参入を目指している。

 日本企業が参入したとしても、米国4社は提供事業者として残る。どの提供事業者を選ぶかは自治体側の判断に委ねられるため、日本企業のクラウドが広く採用されるかは不透明だ。

 政府クラウドのデータは日本国内で保管することが条件となっており、データは暗号化して保管する仕組みで、復元する鍵は日本の行政機関が管理する。

 ◆政府クラウド=国と地方自治体共通のIT基盤。氏名や個人番号(マイナンバー)、戸籍、国民年金、住民税といった個人情報などを保管する。行政事務の効率化のため導入が進む。政府方針で、地方自治体は原則2025年度までに、住民データなどを政府クラウドに移行する予定。