そこまで深く気には留めずに、鎌田は一度、フランクフルトへ飛ぶことになった。ヨーロッパの重要なハブ空港であり、勝手知ったる街にあるフランクフルト国際空港からは、ヨーロッパの主要都市のほとんどへ直行便が出ているからだ。日本からのロングフライトを終えてフランクフルトで1泊し、翌日に目的地へ飛ぶことになっていた。

 しかし――。

 フランクフルトに着くと、嫌な予感が増大するような連絡があった。

「(人員整理をする前に)獲得することができなくなった。やはり、ファイナンシャルフェアプレーに抵触する恐れがあるから、今いる選手を売却してからでないとサインはできない。それでも、必ず……」

半日以上かけてフランクフルトまで来て、この仕打ちか。さすがにありえんやろ! 

 そう思わずにいられなかったが、苦しかったのはそこからだ。該当選手の売却がいつ決まるかわからない。かといって、夏休みの学生のように毎日ゴロゴロしていられるわけがない。練習できる環境はないから、フランクフルトの街で走り込みを続けて、コンディションを保つしかなかった。

「メンタルが複雑骨折しているくらい、イカれていました」