ただ、幸いだったことがある。そんな状況でもひっきりなしに、鎌田に対して他のクラブからも獲得についての問い合わせが来ていたのだ。

 この時点で所属クラブがないために十分なトレーニングをする環境がなかったのは痛かったが、移籍金がかからずに取れるというのは各クラブにとっては魅力的だったようで、引く手あまただった。長谷部にはグチを聞いてもらうかたわら、自分に関心を寄せてくれるクラブについての意見を求めることもできた。

 そのような時間が9日あまり続いたのだが、契約をすると“約束”してくれたクラブの人員整理は一向に進まない。サウジアラビアのクラブがヨーロッパの移籍市場に介入してきたことや、例年に比べて選手間の移籍が決まるタイミングが遅れるなど、様々な理由があったとはいえ、まだ見通しはたたない。そのクラブは「8月末までには間違いなく契約できる状態になるから」という意向を示していたのだが……。