音楽というよりは、もはや音の圧力だった。

「代打のコールで一気に盛り上がって。聞いたことのない(くらいの)音で、あれで飲まれてしまった」

沖縄尚学の捕手、大城和平がそう悔やんだのは、慶応の6回表、先頭打者の9番・鈴木佳門のところで、代打「清原勝児」がコールされたときのことである。甲子園のスーパースター、清原和博の息子の登場に球場のボルテージが一気に上がる。

慶応の大応援団で隙間なく埋まった三塁側のアルプススタンドが大きな壁となり、『ダッシュKEIO』の大音量とともに、グラウンド側に倒れかかってくるかのようだった。

「(ピッチャーの)蒼の球自体は変わっていなかったと思う。ただ、僕が応援にペースを崩されて、配球が単調になってしまった。そこまでは変化球をうまく使っていたのに簡単に行き過ぎました」

ここで、また一段階、慶応の応援の出力が上がる。そして、東恩納は、続く3番・渡辺千之亮に対して、この日初めてとなる四球を与えてしまう。
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