8月中旬の休日夜、歌舞伎町1丁目の「シネシティ広場」付近は、外国人観光客を含め多くの人出で賑わっていた。広場前の道路の両側には、近くで営業するコンセプトカフェ(通称:コンカフェ)の店員がずらりと並んで客引きをしている。

「こちら、どうぞ」

気温30度前後と蒸し暑い中、男女2人がペアで客引きの女性たちに汗拭きシートを渡していった。その裏には、歌舞伎町で活動する民間支援団体の連絡先を記載した用紙が貼り付けてある。

「どうも」「ありがとうね」という返事をはにかみながら受けていたのは、愛知医科大(愛知県長久手市)の男子学生(25)と女子学生(22)。その様子を同大の宮田靖志特任教授が優しい表情で見守っていた。

2人がアプローチしたのは、コンカフェ店員だけに限らない。ガールズバー店員や、広場の北側にある大久保公園で男性から声をかけられるのを待つ「立ちんぼ女性」なども対象としていた。

コンカフェ店員は汗拭きシートを受け取ってくれ、目を見ながらの会話もできた。一方、立ちんぼ女性の半数以上は相手にしてくれず、目も合わせてくれない。支援団体から、立ちんぼ女性が抱えている生活困難を聞いていただけに、両者の対応の違いが印象に残った。

「歌舞伎町における女性の性的搾取は、SDHと密接に絡んでいる。医学部生のうちに、こうした実態を知ることは、大いに意味がある。将来、医師になったとき、患者の多様な背景に考えを巡らせるようになってもらいたい」

昨秋からこの研修を開始し、これまで5回ほど実施し、26人の医学部生を連れて来た。
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