実在する警察署の電話番号を悪用した特殊詐欺の手口が、最近、確認されるようになっているという。スマートフォンや固定電話の画面に警察署の正式な番号が偽装表示され、電話に出た高齢者らに「警察官」と信じ込ませ、現金などをだまし取るというが、正式な番号を表示されるシステムは不明で、警視庁は警戒を強めている。

東京都板橋区に住む、50代の女性のスマートフォンに今年7月下旬、末尾が《0110》の固定電話から2回着信があった。いずれも仕事中で取れなかったが、数時間後に折り返したところ神奈川県警の警察署の代表につながった。

着信があった旨を伝えたが、応対した職員が調べを尽くしてくれた結果、警察署内の、どこからも発信された形跡がないことが確認され、特殊詐欺グループが署の番号を偽装表示させた疑いが浮上したという。

女性は「電話に出られなかったから良かったが、実在する警察署の電話番号から掛かってきたとなると、いくら注意していても、だまされてしまうのではないか」と訴える。

警視庁によると、こうした警察署の電話番号を悪用した手口は最近、目立つようになっているという。警視庁暴力団対策課が今年7月、詐欺未遂容疑で逮捕した男(28)のグループも、実在する北海道警の警察署の番号を表示させ、70代の女性のスマートフォンに電話を掛けていた。

そして、電話に出たその女性に、警察官らに成りすまし「犯罪嫌疑がかけられている」「現金を郵送する必要がある」などと噓を言って、現金をだまし取ろうとした。グループはこうした手口で、令和3年8月以降、約50件で総額計9400万円をだまし取ったとされる。

ただ、捜査関係者によると、どのように実在する警察署の電話番号を表示させていたのかは、男が黙秘するなどし、詳しくは分かっていないという。警視庁幹部は「(偽装表示ができるとなると)住民も何を信じていいのか、分からなくなる」と危惧する。

警察庁によると、令和4年11~12月に全国の警察が認知した特殊詐欺事件の分析では、犯行グループが被害者に最初に接触する手段として、最も多いのは「電話」で85・2%を占めている。警察幹部は「いずれにしても知らない電話から掛かってきた場合は、出ないことを徹底するだけでも被害は防げる」として、注意を呼び掛けている。