全国で相次いだ強盗事件のうち、京都市の時計店で昨年5月に腕時計41点(6900万円相当)を奪ったなどとして、強盗などの罪に問われた建設業伊藤一輝被告(30)=大阪市鶴見区=の裁判員裁判の判決が1日、大阪地裁であり、岩崎邦生裁判長は懲役12年(求刑懲役15年)を言い渡した。

 京都の事件は、フィリピンを拠点とした特殊詐欺グループ幹部が「ルフィ」と名乗り、伊藤被告に指示を出したとされる。検察側は公判で、伊藤被告が実行役をSNSで募集し、ルフィの指示を実行役の男女らに伝えたとして、「犯行に不可欠な主導的役割だった」と主張した。ルフィとの関わりは昨年3月、大津市の質店に侵入しようとした建造物侵入未遂事件からで、きっかけは「借金を抱え、SNSで闇バイトの募集に応じた」と指摘した。

 また、伊藤被告が二つの事件の後、自ら事件を起こしていったとも指摘。大阪市で昨年5月、現金を奪う目的で男性2人を襲った逮捕監禁致傷などの罪、パチンコ店で売上金を奪おうとした強盗致傷罪でも起訴し、「実行役、指示役、首謀者と犯罪傾向が深くなった。社会に大きな不安と恐怖を与えた」と訴えた。

 一方、弁護側は京都と大津の事件について、「ルフィから『店とは裏でつながっていて警察には捕まらない』と説明された。関与は従属的でルフィにだまされた面があった」と反論。逮捕監禁致傷などの罪は「人は集めたが、暴行の指示まではしていない」と一部否認し、強盗致傷罪は「実行犯による犯行で共謀はしていない」として無罪を主張した。

 ルフィを名乗っていたのは特殊詐欺グループ幹部の今村磨人(きよと)被告(39)とされ、京都の事件を指示したとして強盗罪で起訴されている。(山本逸生)

朝日新聞 2023年9月1日 16時02分
https://www.asahi.com/articles/ASR9142LCR80PTIL003.html?ref=tw_asahi