星野仙一 『ハードプレイハード 勝利への道』 p.20より

 単純なミス、ボーンヘッドについては怒鳴るだけでいい。 しかし、チームメイトの士気を落とすような、 闘志や気力に欠けたプレイをする選手は許さない。 数年前、選手会長まで務めた外野手がいた。 スイッチヒッターだが、左バッターボックスに入ると、 三球三振をしても平気な顔で帰ってくる。 コーチが叱るのだが、本人は、 「ぼくの左打ちは後天的に作ったものだから、 そんなに粘れないんですよ」と平然たるものだ。

 ある試合で、その選手がランナーで出ているときに、 タイムリーヒットが出た。 全力で走っていればホームに還れるタイミングだった。 ところが、彼は後ろを振り返りながら走ってタッチアウトになった。 選手会長という、選手の手本となるべき立場の中心選手にもかかわらずである。

 私は、シーズン終了後に、その選手をチームから出した。 「ハード・プレイ・ハード」の精神こそが、劣勢をも互角に引き戻し、さらにチャンスを広げる。 この基本精神がチームの目標であり、私の不変の目標なのである。