一般人が現行犯を取り押さえる私人逮捕は法的に認められており、こうした行為を通じて治安向上や犯罪撲滅をうたっているのが特徴だ。ただ、逮捕の際の制圧行為に行き過ぎがあったり、動画を公開したりすることの是非も指摘されており、こうした「パトロール系」「世直し系」YouTuber(ユーチューバー)の過激化が懸念されている。

スクリーンショット 2023-09-09 20.18.45

「ダメだよ転売しちゃ」。8月末に公開された動画では、人気アイドルグループのコンサートチケットを転売したという男性を取り押さえる様子が公開されている。動画では、男性を羽交い締めにして地面に押さえつけた後、犯罪行為だと諭し、警察に引き渡すまでを撮影している。

同様の動画は、複数の人物がYouTubeやSNSに相次いで投稿。再生数が数万回を超えるものもある。こうした動画に対し、SNSでは「もっとやるべき」「正義の鉄槌を与えてくれてすっきりする」といった意見の一方で、「正義感を振りかざした暴力に見える」「人違いだったらどうするのか」と批判も上がっている。

刑事訴訟法は「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と一般人が現行犯を取り押さえる行為を認めている。ただ、ユーチューバーとしても活動する高橋裕樹弁護士は「例えば寝技で押さえ込む行為は首や腰の捻挫につながり、逮捕する正当な理由がなければ傷害罪となる可能性もある。逮捕の要件があるかどうかは高度な判断が必要となる」と懸念する。

元警察官僚の沢井康生弁護士は、反撃を受けて自分自身が負傷したり、取り押さえられた容疑者の身元が動画で特定される場合は名誉毀損で訴えられたりする可能性もあると指摘。「私人逮捕は法的根拠のある行為ではあるが、一般人はバランスをとるのが難しい。警察官を呼べない状況や時間がかかる場合以外は、まず警察に通報することを優先してほしい」と話している。

https://www.sankei.com/article/20230905-HZFTRQLJKND7LF3FTNQCUJE5LU/