「国にとって大事なものは、税収ではなく、この国に生きる1人1人であり、その人々が生み出す文化や付加価値だと思います」

「税を納めたら生きていけないというのは本末転倒ではないですか」

「成長産業だと期待されるクールジャパンを支える業界の裾野をインボイス制度はごっそり削ってしまうのです。裾野が削れれば、山は低くなり、海外に負け、日本の文化の未来は断ち切られてしまいます。作品の低下はじわじわやってきます 一度失われた文化は戻りません」

 甲斐田さんは時折涙声になりながら役人へ問いかけた。

しかし当事者の訴えに対して財務省と国税庁の態度は冷たいものだった。「目の前の税収増よりも成長した産業からの収益には目がないのか?」という問いに対しては実質ゼロ回答。周知広報に努めるとしか答えなかった。

 そしてインボイスは消費税が複数税率を導入している上で欠かせない制度だと答え、将来の成長による税収増は「別問題」だと切り捨てた。財務省の答弁に対して議員は怒りをにじませながら反論し、既にインボイス未登録者が受けた不利益について問いただすシーンが見られた。

 さらに質疑応答の最後に立憲民主党の古賀之士(ゆきひと)参議院議員から「当事者の皆さんが言っている「消費税の税率を下げる」や「インボイスの中止などを逆提案する」について答えてください」と声を上げた。この問いに対しても財務省は「消費税は社会保障の財源なので下げない」と断言。改めてインボイス中止はしないと明言した。