ドラゴンクエスト、というゲームをやった日のことを、僕は今でも覚えている。

僕は「勇者」だった。

僕は勇者である「僕」に名前をつけて、ドラゴンクエストの世界で敵を倒し、姫を救い出し、そしてみんなの拍手喝采を受けてエンディングを迎えた。

でも、今の僕はどうだろう。

僕は、僕じゃなくてもできる与えられた仕事をこなす。
それって、何を聞かれても何をたずねられても、
「ここはアリアハンの町です」
としか答えないドラゴンクエストの町の人じゃないか。


僕は、変わりたい。そう思った。


町の人の人生を否定する気はないし、否定することなんてできない。
成功だけが全てじゃない。それも分かってる。
でも、この今を、僕がいるこの場所を、本当は不憫に思っているのに、抜け出したいと思っているのに、


「これでいい。これが僕の人生だ」

と無理やり、言い聞かせて過ごすような人生は、絶対にまちがってる。


少し残ってたビールの缶を握りしめ、

そして、潰した。