不可解なのは、C病院がこの“竹田くん”をなぜ採用したのかということだ。当然、それまでの彼の実績は情報として知っていたはずだ。

 実はこの背景にあるのが、2024年4月から施行されている医師の「働き方改革」だ。医師という職業においても、時間外労働の上限は年間960時間となった。歓迎されるべき改革だが、これは「月5回当直」すれば突破してしまう厳しい水準。さらに違反が判明した場合は、医療機関には「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科せられる。

 ゆえに現状では、生死に関わり、時間を問わず患者が運び込まれる救急救命科は常に深刻な医師不足に悩んでいる。“竹田くん”のように「手術意欲の高い40代男性医師」ともなれば「引く手あまた」だったことが推測される。「悪い噂」を耳にしても「ちゃんと監督すれば何とかなるだろう」と過信して採用しかねない。そんな空気に後押しされて、“竹田くん”は転職を繰り返し、結果的に患者への死を含む被害を続出させたということのだろう。

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