大リーグが15年に導入したデータ解析システム「スタットキャスト」は、今季から「バットトラッキング」と呼ばれるバットのスイング速度や軌道の測定を開始した。多くのデータが新たに集計され、中でも「最も価値のあるスイング」の指標として注目を集めるのが「ブラスト」だ。

 スタットキャストチームは16年に「バレル」という指標を生み出した。長打になりやすい打球速度と打球角度の組み合わせを「バレルゾーン」とし、フライボール革命を巻き起こした。バレルが「打球」を計測するのに対し、ブラストは長打になりやすい「スイング」を計測したものだ。

 大リーグ公式サイトのデータ分析を担当するデービッド・アドラー氏は「バレルは結果で、ブラストはそれまでの過程を定義したものです。スイングの速さと、バットの芯で捉えることの、理想的なコンビネーションを表現する。長打力、本塁打数に直結している」と語る。定義は、ボールをいかにバットの芯付近で捉えたかを表す「スクエアドアップ率(%)」と、「スイング速度(マイル)」の合計が164以上であること。その際にスイングが「ブラスト」と認定される。例えば打球を放った際、スクエアドアップ率が90%で、スイング速度が75マイル(約121キロ)ならば、足して「165」となり「ブラスト」となる。大谷の今季のブラスト数103回は、メジャートップに立つ。

 平均スイング速度のメジャートップはヤンキース・スタントンの80.7マイル(約130キロ)で、大谷は15位の75.4マイル(約121キロ)。規格外の飛距離からすれば物足りない印象でもあるが、メジャーの平均スイング速度は72マイル(約116キロ)で、エリート打者とされる75マイル以上は大谷を含めわずか24人しかいない。アドラー氏は「大谷は投手にダメージを与えるには十分なスイング速度を誇っている」と指摘する。

 また、どれだけバットの芯付近でボールを捉えたかを表すのが「スクエアドアップ率」。これが80%以上の際にカウントされる「スクエアドアップスイング」数149はメジャー13位タイだ。「大谷は危険な速度のスイングで、ボールをしっかり捉えていることになる」と解説する。

 「大谷を“特別な打者”にさせているのは、スイングの速さと、ボールを芯で捉える確率の高さのコンビネーションだ」と言い切る。高いフィジカルが生むスイング速度と、ボールをバットの芯で捉える技術の高さ。その両方を兼ね備えた、世界で「最も価値あるスイング」を今我々は目撃している。
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