障害者施設側に賠償命令 15歳、行方不明後に遺体で発見
2019/3/22 14:52

 平成27年に東京都八王子市の障害者施設から行方不明となり、遺体で見つかった松沢和真さん=当時(15)=の両親が、安全管理を怠ったとして施設を運営する社会福祉法人藤倉学園(東京)に約1億1400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、東京地裁であった。
田中秀幸裁判長は「障害がない者と同等かそれより優れた能力を発揮する可能性があった」として、障害のない男女の平均賃金を基に約5200万円の支払いを命じた。


 松沢さんが生きていれば得られるはずだった「逸失利益」の算定方法が争点だった。
両親側は障害のない男性の全年齢平均賃金を基礎に約7400万円と算定すべきだと主張。
施設側は逸失利益はなく、あっても福祉的就労で得られる額を基にすべきだと反論していた。

 田中裁判長は、障害者雇用促進法や障害者雇用を推進しようとする社会情勢に触れ「国の障害者雇用施策は大きな転換期を迎えようとしている」と指摘。
単に一般企業で就労する可能性を否定するのでなく「個々の障害者の能力を検討し、一般就労が可能か判断するべきだ」と判示した。

 その上で、松沢さんが特定の分野で高い集中力を持っていたことを評価。現状の健常者との就労格差を踏まえ、障害のない男女の19歳までの平均賃金を採用し、逸失利益だけで約2200万円と算定した。これに慰謝料などを加えた。

 障害者の逸失利益をめぐっては、平成21年に最低賃金を、27年には平均賃金を3割減とした額で算定する判決が出ていた。
判決後に会見した代理人の坂本千花弁護士は「平均賃金の10割を認めたのは大きな前進で画期的な判決」と述べた。
父の正美さんは「息子の発達の可能性などを判決に組み入れてくれ納得している。今後のよい裁判例になれば」と話した。