今季FA権を獲得した阪神・大山悠輔の動向が注視されている。

 大山はコロナの影響により120試合制で開催された2020年に自己最多の28本塁打をマークし、打撃が開花。今季は130試合に出場して打率2割5分9厘、14本塁打、68打点、OPS.721の成績を残し、主軸として打線を牽引した。昨年オフの契約更改では、球団側から複数年契約を提示されたものの、単年契約を結んだことが報じられており、FA権を行使すれば複数の球団が獲得に名乗りを上げるのは確実視されている。

 中でも長打力不足に悩む広島にはフィットする選手だろう。今季は期待されていた外国人選手がことごとく大ハズレ。4番に小兵の小園海斗や上本崇司を起用するなど、新井貴浩監督は選手起用に頭を悩ませた。仮に大山が入団すれば「強打の1塁手」という広島の補強ポイントにピタリと当てはまるというわけだ。

 ライバル球団も黙ってはいない。4年ぶりのV奪回を果たした巨人は、主将・岡本和真のポスティングシステムによるメジャー挑戦が現実味を帯びており、スラッガーの補強が不可避。潤沢な読売グループの資金をバックに、札束攻勢を仕掛けてくる可能性は高い。

 一方、資金力で劣る広島は、新井監督の「人脈」に期待するしかない。大山は2020年からバットのヘッドが投手寄りになるよう打撃フォームを変え、本塁打を前年の14本から28本に倍増させた。実はこのフォームは新井監督直伝のバッティング術であり、大山は「新井さんの助言で、バットを真っ直ぐ押し出すイメージで振り抜くことができた」と語っている。

 大山は新井監督を師匠と慕い、さらに新井監督の弟・良太氏(現・広島2軍打撃コーチ)の教え子でもある。「新井兄弟」との結びつきは深く、新井監督が三顧の礼を尽くせば来季、赤ヘルを被る姿が現実のものとなるかもしれない。

(ケン高田)