http://civilpro.sx3.jp/kurita/_encyclopedia/haisinService.html

世界中で生ずる様々な出来事について、新聞社等の報道機関がその全てについて自力で取材して記事を作成することは困難である。
そこで、記事を配信する会社(通信社)から記事を入手してそれを掲載する慣行が生ずる。
その記事に他人の名誉を害する内容が含まれていた場合に、通信社とは別個に、報道機関も被害者に対して損害賠償責任を負うかが問題となる。
「報道機関が、 定評ある通信社から配信された記事を、 実質的な変更を加えずに掲載した場合に,その掲載記事が他人の名誉を毀損するものであったとしても,配信記事の文面上一見してその内容が真実でないと分かる場合や掲載紙自身が誤報であることを知っている等の事情がある場合を除き,当該他人に対する損害賠償義務を負わないとする法理」を配信サービスの抗弁という(最高裁判所 平成14年1月29日 第3小法廷 判決(平成7年(オ)第1421号))。

最高裁判所は、社会の関心と興味をひく私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とする分野における報道については、この法理を否定している。
この分野における今日までの我が国の現状に照らすと、定評のある通信社からの配信記事であっても,配信記事に摘示された事実の真実性について高い信頼性が確立しているということはできないからである。
なお、梶谷玄裁判官が、最高裁判所 平成14年3月8日 第2小法廷 判決(平成8年(オ)第852号)において、配信サービスの抗弁を採用すべきであると主張しているが、少数意見にとどまった。

他の分野の配信記事については、配信サービスの抗弁が肯定される余地はある。しかし、まだ該当事例がなく、最高裁の判断は示されていない。