昭和人間にとっての「世界の中の日本」は、バブル期のイメージを引きずっています。世界有数の経済大国で、勤勉さではどこにも負けない国で、欧米先進国から一目置かれていて、アジアのリーダーとして周辺諸国に「憧れ」を抱かれていて……。
もちろん、現状はぜんぜんそうではありません。昭和人間も「最近は違うらしい」と気づいています。しかし、染み付いたセルフイメージは、なかなか変えられません。

昨今は繁華街でも観光地でも、外国から観光にやってきたと思われる家族連れやグループをたくさん見かけます。ある時、同年代の友人(60代)と一緒に繁華街を歩いていたら、アジア系の外国人の若者グループとすれ違いました。
それぞれ大きなスーツケースを引きずっています。友人は振り返って彼らの背中を見ながら、「みんなで日本に旅行に来るなんて、若いのにけっこうお金持ちなんだね」と感心した口調でつぶやきました。

もちろん、悪気も他意もありません。友人の中では「貧しい(と見ている)国から、日本という金持ち(と見ている)の国に来るのは、とても贅沢なことに違いない」という認識があるのでしょう。

しかし、その認識は完全に過去のものです。しかも、かなり失礼です。私は「お金持ちじゃないから日本に来たのかもしれないよ」と返して、今の日本は「激安な国」なんだという話をしましたが、あんまり伝わっていない感じでした。