ドラッグバントは、左打者が一、二塁間方向へ転がすんだ。投手と一塁手の間にね。全然自信はあった。セーフになるとわかる。私は笑いながら走ったんですよ。それくらい余裕がありました。

 今は誰も正式に教える指導者がいないが〝コツ〟がある。

 まず構えてバックスイングして、バントをしないようにみせる。投手や一塁手はバントするんじゃないかと様子をうかがってくる。打者がバントする場合は、構えたとき、体が早く開いて前の方にくる。守る方はその〝ちょっとした動き〟を察してスタートをきる。ただ〝打つぞ〟とバックスイングするだけでは、わざとやっているとみられて相手は警戒するんだ。

 悟られない方法がある。バックスイングを取ると同時に左打者なら、投手側の〝右足のかかとを上げる〟のがポイントなんです。ちょっとでも上げると守っている方は、スタートをきれないんです。

 今の打者はバントするときに必ずといっていいほど(左打者なら右)肩が開く。しかもバットに当てたあと右足からスタートしている。逆なんだ。左足からスタートする。左足を投手方向に踏みだし、クロスさせると1歩目が大きく出せる。右足からだと小さな1歩でしかない。〝最初の1歩が勝負〟です。それでセーフかアウトかが決まる。天と地の差です。