X

小説書いた

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
1それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:25:23.89ID:YAtSMp0Z0
タイトル「コートに刻む証明」

雨の音が遠くで聞こえていた。教室の窓から見える校庭は薄暗く、放課後の静けさに包まれていた。中学3年生の春、猫宮は机に突っ伏して、ぼんやりと外を眺めていた。彼女の小さな手には、使い込まれたテニスラケットが握られていた。グリップテープは擦り切れ、弦は少し緩んでいる。それでも、猫宮にとっては大切なものだった。
「ねえ、猫宮。部活行かないの?」
隣の席のクラスメイトが声をかけてきた。明るい声に、猫宮は少しだけ顔を上げた。
「……行くよ。もう少ししたら」
「ふーん。テニス部って地味だよね。何か面白いことあるの?」
その質問に、猫宮は答えられなかった。ただ黙ってラケットを見つめ、立ち上がった。鞄を肩にかけ、教室を出る。背後でクラスメイトの笑い声が聞こえたが、気にしないようにした。ずっとそうやってきたから。

校舎の裏にあるテニスコートに向かう道は、桜の木々が並ぶ細い小道だった。春の終わり、新緑が鮮やかで、風が吹くたびに葉が揺れた。猫宮は歩きながら、自分の足音を数えていた。一歩、二歩、三歩。規則正しいリズムが、頭の中のざわつきを少しだけ落ち着かせてくれた。
テニス部に入ったのは、半年前のことだ。中学1年生の時、姉が事故で死んでから、猫宮の生活は色を失っていた。両親は口をきかなくなり、家の中は冷え切っていた。姉がいた頃は、テニスの大会でトロフィーを持ち帰るたび、家族の笑顔があった。だが、今は誰も笑わない。猫宮はただ、姉が残したラケットを手に持つことしかできなかった。
2それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:25:47.70ID:YAtSMp0Z0
初めてテニスを始めたのは、小学4年生の時だった。姉が庭でラケットを手に持つ姿を見て、猫宮は憧れた。姉は背が高く、動きは優雅で、ボールを打つたびに鋭い音が響いた。両親は姉を褒め、近所の人たちも「将来有望だね」と口々に言った。猫宮はそれを横で見ていた。
「お姉ちゃん、テニス上手いね。パパとママに褒められて、いいね」
ある日、姉にそう言った。すると、姉は少しだけ目を細めて、静かに答えた。
「私、テニス好きじゃないよ。パパとママが喜ぶからやってるだけ。本当の私じゃないんだ」
その言葉が、幼い猫宮には理解できなかった。テニスができる姉が羨ましくて、妬ましくて、だから自分もラケットを手に取った。でも、姉のようにはなれなかった。ボールをまともに打てず、コートを走り回る体力もなかった。両親は猫宮の努力を見ても、何も言わなかった。ただ、冷たい目で「姉ちゃんみたいにはなれないね」と呟くだけだった。

姉が死んだ後、猫宮はテニスをやめようと思った。ラケットを手に持つたび、姉の姿が頭に浮かんで、胸が締め付けられた。でも、ある日、家の中で埃をかぶっていた姉のラケットを見つけた時、手に取らずにはいられなかった。その日から、猫宮は再びテニスを始めた。理由は自分でもわからなかった。ただ、辞めたくなかった。そこに何かがある気がしたから。
3それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:26:05.86ID:YAtSMp0Z0
明星中学校のテニスコートに着くと、すでに部員たちが集まっていた。女子テニス部は人数が少なく、全部で10人ほど。顧問の先生は、元プロ選手だった女性だ。背が高く、ショートカットの髪が風に揺れていた。彼女はいつも無表情で、部員たちからは少し怖がられていた。
「遅いぞ、猫宮」
顧問の声に、猫宮は慌てて頭を下げた。
「すみません……」
「いいから、準備しろ。今日は基礎練だ」
コートでは、先輩たちがラケットを手にアップを始めていた。その中でも目立つのは、涼だった。2年生で、部内では「感覚の天才」と呼ばれている。彼女のテニスはまるで魔法のようだった。ボールの軌道を予測し、軽やかに動き、正確に打ち返す。猫宮はいつも、その姿に見とれていた。

練習が始まると、猫宮はいつものように壁打ちからスタートした。ボールを壁に打ち、返ってくるのを待つ。単調な動作を繰り返しながら、頭の中を整理する。学校でのこと、家の空気、そしてテニスへの思い。何かを見つけたくて、でも何も見つからなくて、それでもラケットを握り続ける理由を考えていた。
「猫宮、下がりすぎだ。もっと前に出ろ」
顧問の声が飛んできた。猫宮は慌てて位置を調整し、再びボールを打つ。だが、力が入りすぎて、ボールはコートの外に飛んでいった。
「はぁ……またか」
ため息をつきながら、ボールを拾いに行く。その時、後ろから柔らかな声が聞こえた。
「猫宮、力抜いてみ。肩が固まってるよ」
振り返ると、涼が立っていた。彼女はにこりと笑って、猫宮の隣に並んだ。
「ほら、一緒にやってみる?」
涼はラケットを手に持つと、軽くボールを打った。壁に当たったボールがきれいな弧を描いて返ってくる。それを見て、猫宮も真似してみた。最初はぎこちなかったが、涼のリズムに合わせているうちに、少しずつ感覚が掴めてきた。
「そう、上手いよ。猫宮、センスあるね」
「え……そんなことないです。私、下手だし……」
「下手でもいいじゃん。テニス好き?」
その質問に、猫宮は一瞬言葉に詰まった。
「……わからない。でも、辞めたくない」
涼は少し驚いたように目を見開き、それから優しく笑った。
「それでいいよ。それが猫宮のテニスだ」
その言葉が、猫宮の胸に小さく響いた。
4それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:26:15.44ID:iUegN4fX0
つまりまんこってこと?🥺
5それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:26:30.49ID:YAtSMp0Z0
その日から、猫宮はテニス部での時間を少しずつ楽しめるようになった。涼の指導で基礎を学び、顧問の厳しい目に見守られながら、少しずつ上達していった。そして、もう一人、忘れられない存在が現れた。氷華だ。
氷華は3年生で、かつてジュニアのトップ選手だった。芽吹と並ぶ才能を持ちながら、怪我で一時期テニスを離れていた。復帰したばかりの彼女は、まだ本調子ではなかったが、その眼光には鋭い意志が宿っていた。
ある日、練習試合で氷華と対戦した時、猫宮は初めて「本物」のテニスを見た。氷華のショットは力強く、正確で、コートを支配するような迫力があった。猫宮はあっという間に負けたが、その敗北は悔しさよりも憧れを強く残した。
「氷華先輩……すごい」
試合後、汗を拭きながら呟くと、氷華は静かに振り返った。
「猫宮、お前も悪くないよ。もっと練習すれば、伸びる」
その一言が、猫宮に火をつけた。自分にも何かできるかもしれない。そう思えた瞬間だった。
6それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:26:43.07ID:YAtSMp0Z0
春が終わり、夏が近づく頃、テニス部は県大会に向けて本格的な準備を始めた。顧問は部員たちを集め、目標を告げた。
「関東準決勝まで行ければ、全国が見える。やるなら本気でやれ」
その言葉に、部員たちの間に緊張が走った。そして、猫宮の耳に、ある名前が届いた。
「桜乱の芽吹……あいつが相手だ。最強の壁になるだろうな」
芽吹。日本ジュニアの頂点に立つ怪物。氷華と因縁を持つライバル。猫宮はその名前を聞いて、なぜか胸がざわついた。まだ見ぬ強敵。でも、どこかで感じていた。
――あの人に会ったら、私、何かが変わるかもしれない。

雨が降り始めたコートで、猫宮はラケットを握り直した。県大会までの長い道のりが、今始まったばかりだった。
7それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:27:17.71ID:YAtSMp0Z0
夏の入り口、6月の風がテニスコートを吹き抜けていた。明星中学校の女子テニス部は、放課後の練習に励んでいた。汗と笑い声が混じり合い、コートにはボールを打つ乾いた音が響き続けていた。猫宮はラケットを手に、ネット際でボレーの練習を繰り返していた。
「猫宮、もう少し膝を曲げて! ボールに近づくんだ!」
顧問の鋭い声が飛んでくる。猫宮は慌てて姿勢を直し、涼が打ってくるボールに飛びついた。だが、タイミングが合わず、ラケットの枠に当たってボールが外に飛んでいく。
「う……また失敗……」
猫宮が肩を落とすと、涼が笑いながら近づいてきた。
「焦らなくてもいいよ。ボレーって慣れだからさ。ほら、もう一回」
涼は軽くボールをトスし、再び打ち始めた。彼女の動きは流れるようで、無駄がない。猫宮はそれを真似しようと必死にラケットを振った。何度も失敗しながらも、少しずつボールがネットを越えるようになった。
「そうそう、いい感じ! 猫宮、だんだん上手くなってきたね」
涼の笑顔に、猫宮は小さく頷いた。胸の奥が温かくなるのを感じた。誰かに認められるなんて、初めてだった。
8それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:27:32.13ID:YAtSMp0Z0
練習が終わり、コートの脇で部員たちが水筒を手に休憩していた。猫宮は汗を拭きながら、氷華の姿を目で追った。彼女は一人、少し離れたベンチに座り、ラケットの弦を調整していた。その姿はどこか孤高で、近寄りがたい雰囲気があった。
「氷華先輩って、すごいよね……」
猫宮が呟くと、隣にいた涼が水を飲みながら答えた。
「うん。昔はジュニアのトップだったからね。でも、怪我でしばらく休んでた。今はまだ本気じゃないよ。あの人、本当はもっとすごいんだから」
「もっとすごい……?」
「そうだよ。氷華が本気になったら、この部活、もっと強くなる。でもさ、猫宮だって負けてないと思うよ」
「え、私?」
猫宮が目を丸くすると、涼はにやりと笑った。
「うん。何かさ、猫宮のテニス見てると、頑張りたくなるんだよね。不思議だよ」
その言葉に、猫宮は戸惑いながらも嬉しさがこみ上げた。自分なんかにそんな力があるなんて、思ってもみなかった。
9それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:27:54.03ID:YAtSMp0Z0
その日の練習後、顧問が部員たちをコートに集めた。夕陽が空を赤く染め、風が少し冷たくなっていた。
「県大会まであと2ヶ月だ。そろそろ本腰を入れるぞ。お前ら、このままじゃ地区予選で終わる」
顧問の声に、部員たちの間に緊張が走った。彼女は腕を組み、鋭い目で一人一人を見回した。
「今年の関東はレベルが高い。特に桜乱中だ。あそこには芽吹がいる」
「芽吹……?」
猫宮が小さく呟くと、顧問の視線が彼女に止まった。
「知らないのか? 日本ジュニアのNo.2だ。いや、1試合の勝負ならNo.1と言ってもいい怪物だよ。氷華とも因縁がある」
その言葉に、部員たちの視線が氷華に集まった。氷華は無言でラケットを手に持ったまま、遠くを見つめていた。顧問は続けた。
「桜乱を倒さない限り、全国には行けない。それが現実だ。覚悟しろ」
解散後、部員たちはざわつきながら帰り支度を始めた。猫宮は鞄を手に持ったまま、氷華の背中を見つめていた。芽吹という名前が、頭の中で響き続けていた。どんな人なんだろう。どんなテニスをするんだろう。そして、氷華先輩とどういう関係なんだろう。
「猫宮、帰るぞ」
涼の声に我に返り、猫宮は慌てて頷いた。だが、心のどこかで、芽吹という存在が少しずつ大きくなっていくのを感じていた。
10それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:28:18.50ID:YAtSMp0Z0
帰り道、猫宮は涼と並んで歩いていた。夕暮れの住宅街は静かで、遠くから犬の吠える声が聞こえた。
「涼先輩、氷華先輩と芽吹って、どういう因縁なんですか?」
猫宮の質問に、涼は少し考え込むように空を見上げた。
「うーん、詳しくは知らないけどさ。氷華と芽吹は、昔、ジュニアの大会でずっとトップ争いしてたんだって。どっちも負けず嫌いで、毎回試合がすごいことになってたらしいよ。でも、氷華が怪我してからは、芽吹が一人でトップに立っちゃって……なんか、氷華にとっては悔しい相手なんじゃないかな」
「そうなんだ……」
猫宮は頷きながら、自分の胸に手を当てた。氷華の気持ちはわからない。でも、芽吹という名前を聞いた瞬間、なぜか体が震えた。怖いような、楽しみなような、不思議な感覚だった。
「猫宮はどう思う? 芽吹と戦ってみたい?」
涼の問いかけに、猫宮は一瞬言葉に詰まった。
「……わからない。でも、もし戦うなら、負けたくない」
その答えに、涼は目を細めて笑った。
「いいね、その気持ち。持っててよ。いつか役に立つから」
11それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:28:41.36ID:YAtSMp0Z0
家に帰ると、いつもの静けさが猫宮を迎えた。両親は仕事で遅く、夕食の準備も自分でしなければならなかった。冷蔵庫から冷えたご飯と味噌汁の素を取り出し、簡単な食事を作った。テーブルに一人で座り、箸を動かしながら、今日のことを考えていた。
涼先輩の笑顔。氷華先輩の鋭い目。顧問の厳しい声。そして、芽吹という名前。テニス部に入ってから、初めて感じる「何か」が、猫宮の心の中で育ち始めていた。
食事を終え、部屋に戻ると、姉のラケットが目に入った。埃をかぶっていたそれを手に取り、そっと弦に触れた。
「お姉ちゃん……私、テニスで何か見つけられるかな」
答えは返ってこなかった。でも、その夜、猫宮は久しぶりに穏やかな気持ちで眠りについた。
12それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:28:55.26ID:YAtSMp0Z0
翌日の練習で、猫宮は少しだけ変わっていた。ラケットを握る手に力がこもり、ボールを打つ音がいつもより鋭くなった。顧問がそれに気づき、軽く頷いた。
「猫宮、いい目してるぞ。その調子だ」
褒められたことに驚きつつ、猫宮は小さく笑った。コートに立つ自分が、少しだけ好きになれた瞬間だった。
県大会までの道はまだ遠い。でも、仲間と響き合う音が、猫宮を少しずつ前に押し出していた。
13それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:29:18.25ID:YAtSMp0Z0
6月の終わり、梅雨の合間の晴れた日だった。明星中学校のテニスコートは、夏の陽射しに照らされ、熱気が地面から立ち上っていた。猫宮は汗を拭いながら、ラリー練習に励んでいた。対戦相手は涼で、彼女の軽快なショットが次々とコートに飛んでくる。
「猫宮、もっと足動かして! ボールに追いつけ!」
涼の声に、猫宮は必死に走った。右へ左へ、コートの端から端まで。息が上がり、足が重くなる。それでも、ラケットを振る手を止めなかった。ボールがネットを越え、涼のコートに返ると、彼女が笑顔で拍手した。
「やった! 猫宮、10本続いたよ! 上手くなったね!」
「ほ、本当ですか……?」
猫宮は息を切らしながら、信じられない気持ちで涼を見た。今まで、ラリーなんて5本も続けばいいほうだった。それが10本。自分でも驚くほどの上達だった。
「うん。動きが良くなってる。猫宮、ちゃんとボール見て動けてるよ」
涼の言葉に、猫宮は胸が熱くなった。頑張れば、ちゃんと結果が出る。そんな当たり前のことが、初めて実感できた瞬間だった。
14それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:29:39.27ID:YAtSMp0Z0
練習の合間、コートの脇で水を飲んでいると、氷華が近づいてきた。彼女はラケットを手に持ったまま、猫宮の隣に腰を下ろした。
「最近、頑張ってるな」
突然の言葉に、猫宮は驚いて水をこぼしそうになった。
「え、あ、はい……ありがとうございます」
「涼に教わってるんだろ? あいつの感覚は特別だから、ちゃんと聞いておけよ。お前なら、もっと伸びる」
氷華の声は落ち着いていて、どこか優しかった。猫宮は目を丸くして、彼女を見つめた。氷華が自分にそんな言葉をかけてくれるなんて、想像もしていなかった。
「氷華先輩、私……本当に上手くなれるんですか?」
その質問に、氷華は少しだけ目を細めた。
「上手くなるかは、お前次第だ。努力すれば、道は開けるよ。私だって、そうやってきたんだから」
その言葉に、猫宮は小さく頷いた。氷華の過去――ジュニアのトップ選手だったこと、怪我で苦しんだこと。それでも今ここにいる彼女の強さが、猫宮には眩しく見えた。
2025/03/01(土) 13:29:44.78ID:AEos+mwy0
エロ展開は?
16それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:29:57.38ID:YAtSMp0Z0
その日の練習後、顧問が部員たちに新たな課題を出した。
「地区予選まであと1ヶ月だ。そろそろ試合形式で慣れておけ。今日はダブルスのペアを組ませる」
部員たちがざわつく中、顧問がペアを発表した。
「猫宮と涼、氷華と飛鳥。あとは適当に組め」
猫宮は涼と目を合わせ、緊張した笑顔を浮かべた。ダブルスなんて初めてだ。どうすればいいのかわからないまま、コートに立った。対戦相手は、2年生の飛鳥と氷華のペア。飛鳥は県内でも有名な選手で、スピードとパワーが持ち味だった。
試合が始まると、猫宮はすぐに圧倒された。氷華の正確なショットと、飛鳥の力強いスマッシュが次々と襲ってくる。涼が懸命にカバーするものの、猫宮はボールに追いつけず、何度もミスを重ねた。
「猫宮、落ち着いて! 私の声を聞いて!」
涼の指示に従い、猫宮はなんとか動き始めた。涼が「右!」と叫べば右に走り、「下がれ!」と言われれば下がる。少しずつ息が合い始め、1ポイント、2ポイントと返すことができた。
試合は6-2で負けたが、終わった瞬間、涼が猫宮にハイタッチを求めてきた。
「猫宮、初めてにしては上出来だよ! 最後の方、私と合ってたじゃん」
「そう……ですか?」
「うん。ダブルスってさ、信頼が大事なんだ。猫宮、私のこと信じてくれてたよね?」
その言葉に、猫宮は頷いた。涼の声が、コートの中で頼りになる灯台のようだった。自分一人じゃ何もできない。でも、仲間がいれば、少しだけ強くなれる。そんな気持ちが芽生えていた。
17それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:30:12.35ID:YAtSMp0Z0
練習が終わり、コートを片付けている時、顧問が猫宮を呼び止めた。
「猫宮、お前、動きが良くなってるな。少しは自信持てよ」
「え……ありがとうございます」
猫宮が頭を下げると、顧問は少しだけ目を細めた。
「私も昔は、お前みたいだった。才能なんてなかったよ。でも、努力でなんとかした。それがテニスだ」
顧問の言葉に、猫宮は驚いて顔を上げた。元プロ選手だった顧問が、才能がなかったなんて。彼女の無表情な顔に、初めて人間らしい影を見た気がした。
「顧問って……プロだったんですよね?」
「まぁな。世界を回ったけど、結果は残せなかった。夢破れた落ちこぼれだよ」
その声には、自嘲が混じっていた。猫宮は何か言おうとしたが、言葉が見つからず、ただ黙って顧問を見つめた。
「お前には、そうなってほしくない。それだけだ」
顧問はそう言い残し、片付けに戻っていった。猫宮はその背中を見ながら、胸の奥で何かが動き始めた気がした。
18それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:30:23.42ID:YAtSMp0Z0
夜、家で一人、猫宮は姉のラケットを手に持った。弦を指で弾くと、かすかな音が部屋に響いた。
「お姉ちゃん、私、仲間ができたよ。テニス、楽しいって思える瞬間もあるんだ」
窓の外では、遠くで雷鳴が鳴っていた。梅雨が終わり、本格的な夏が近づいている。県大会への道はまだ遠い。でも、ボールの先に何かが見える気がした。
その夜、猫宮はラケットを抱きしめたまま眠りについた。夢の中で、姉が笑ってくれているような気がした。
19それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:30:27.38ID:U4AH8XgGr
文体がおもんない
20それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:30:37.23ID:YAtSMp0Z0
翌日、学校の昼休み。猫宮は教室で弁当を食べていると、涼がやってきた。
「ねえ、猫宮。昨日、顧問が言ってた桜乱の芽吹ってさ、すごいらしいよ。動画見つけたから、後で一緒に見ない?」
「芽吹……?」
猫宮の心臓が少し速く打った。涼が持ってきたスマホには、芽吹の試合映像が映っていた。コートを支配するような動き、鋭いショット。そして、冷たく鋭い目。
「この人、氷華先輩と戦ったことあるんだよね。強すぎて怖いくらいだよ」
涼の声に、猫宮は画面を見つめたまま頷いた。芽吹。その名前が、頭の中で大きく響いた。まだ遠い存在。でも、いつか必ず会う相手。そんな予感が、猫宮の胸を締め付けた。
21それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:30:53.71ID:YAtSMp0Z0
7月に入り、夏の暑さが本格化した。明星中学校のテニスコートでは、汗と笑い声が響き合い、部員たちが地区予選に向けて練習に励んでいた。猫宮はラケットを手に、ラリー練習の真っ最中だった。相手は涼で、彼女の軽快なショットが次々と飛んでくる。
「猫宮、もっとリズムに乗って! 自分のペースで打ってみて!」
涼の声に、猫宮は頷いた。息を整え、ボールを見つめる。右、左、前。足を動かし、ラケットを振る。最初はぎこちなかったが、徐々に自分の動きに合わせてボールを返す感覚が掴めてきた。
「そう、それだよ! 猫宮、いい感じ!」
涼の笑顔に、猫宮も小さく笑った。ボールを打つたび、自分のリズムが聞こえる気がした。それは、姉の優雅なテニスとも、涼の流れるような動きとも違う、猫宮だけの音だった。
22それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:31:11.75ID:YAtSMp0Z0
練習の合間、コートの脇で水を飲んでいると、氷華が近づいてきた。彼女はいつものように無言で立ち、猫宮の横に視線を落とした。
「お前、最近変わったな」
「え……?」
猫宮が驚いて顔を上げると、氷華は少しだけ口元を緩めた。
「動きに迷いが減ってる。涼に教わってる成果だろ。でも、それだけじゃない。お前自身が何か掴み始めてる」
その言葉に、猫宮は胸が熱くなった。氷華に認められるなんて、夢にも思わなかった。
「氷華先輩、私……自分のテニスって何かわからないんです。でも、最近、仲間と一緒に打つのが楽しいって思うようになって」
「それが、お前のテニスだよ」
氷華の声は静かだったが、力強かった。猫宮は目を丸くして、彼女を見つめた。
「仲間と一緒にいることが、お前の強さになる。忘れるな」
氷華はそう言い残し、コートに戻っていった。猫宮はその背中を見ながら、胸の奥で何かが動き始めた気がした。
23それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:31:17.01ID:rfnI8Mr0d
||||||||||||||||||||||シ''''""" ........          ..;;illl||||||llii;;,,...   |||||||||||||||||||||
||||||||||||||||||||'" .,,;il||||||||||||lli,.        '""""" ""''ミii,..   ||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||| .,;il|i'""                ..,,,,,,.      il|||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i   .,,,;iツiii''"''''ミi;,.        .,;ilツ'.;ニ;..''' ''ミi,.  il||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||l'  ;'"".;il||||||||ミi;."';,,.    .,;ill|'" .,;l||||||||||ミ;,. "'  i|||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i  i|' .l||||||||||||ミi; "'   .,i'"   'i||||||||||||lツ' i  il|||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i  i|' .l||||||||||||ミi; "'   .,i'"   'i||||||||||||lツ' i  il|||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i  i|' .l||||||||||||ミi; "'   .,i'"   'i||||||||||||lツ' i  il|||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i  i|' .l||||||||||||ミi; "'   .,i'"   'i||||||||||||lツ' i  il|||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i  i|' .l||||||||||||ミi; "'   .,i'"   'i||||||||||||lツ' i  il|||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i  i|' .l||||||||||||ミi; "'   .,i'"   'i||||||||||||lツ' i  il|||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i  i|' .l||||||||||||ミi; "'   .,i'"   'i||||||||||||lツ' i  il|||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||i  'i|ミ;,.'ミi|||||||ツ".,;iil|i'   "''il|l;;,,.. 'ミl||||||lツ..,il|l'  i||||||||||||||||||||
|||||||||||||||||||"  "''iillll|||llllツ''"""       "''ミiill|||||llllツl''"  i||||||||||||||||||||
'|||||||||||||||||||i                             il||||||||||||||||
"'il|||||||||||||||||i,      ..,,,,,,,,;;;;;;:....;;;ili;;,,,,,....          il||||||||||||ツ
  ''ill|||||||||||||i,     il|||l,.  "  ;:  l'" ;l il||||iii;,        ill||||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i|||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
   "'i||||||||||||i;,     "l|||illllllllllllll|iiiiil|liiiiil|lil||||||ツ"      .,;il|||||||||ツ
     "il||||||||||i;;,     "'i||l;i;;,..,,,,,....,,,,;i;;,,iiiツ'",      .,;il||||||||ツ
24それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:31:33.81ID:YAtSMp0Z0
その日の練習後、顧問が部員たちを集めた。夕陽がコートをオレンジ色に染め、風が汗を冷やしていた。
「地区予選まであと3週間だ。そろそろ本番のつもりでやれ。今日から、模擬試合を増やす」
顧問の声に、部員たちが緊張した表情を見せた。彼女は腕を組み、鋭い目で全員を見回した。
「予選を抜ければ、県大会だ。そこで勝ち進めば、関東準決勝が見えてくる。桜乱の芽吹が待ってるぞ」
「芽吹……」
猫宮が小さく呟くと、顧問の視線が彼女に止まった。
「お前、芽吹の動画見たんだろ? どう思った?」
「え、えっと……強かったです。怖いくらい。でも、なんだか、会ってみたいって思いました」
その答えに、顧問は一瞬驚いたように目を見開き、それから小さく笑った。
「面白い奴だな、お前は。いいよ、その気持ち持ってろ。芽吹は怪物だが、倒せない相手じゃない」
顧問の言葉に、部員たちの間にざわめきが広がった。氷華が目を細め、涼が猫宮にウインクした。猫宮は緊張と期待で胸がドキドキしていた。
25それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:31:49.71ID:YAtSMp0Z0
模擬試合が始まった。猫宮と涼のペア対、飛鳥と1年生の新人・美咲のペアだ。美咲は背が低く、動きが素早い選手で、飛鳥との息がよく合っていた。試合が始まると、飛鳥の力強いサーブが猫宮のコートに飛んできた。
「猫宮、下がって!」
涼の声に、猫宮は慌てて後退した。なんとかラケットに当てて返すが、ボールは弱々しくネットを越えるだけ。飛鳥がすぐにスマッシュを決め、ポイントを取られた。
「ごめんなさい、涼先輩……」
「いいよ、いいよ! 慣れてくれば大丈夫だから。次、私がカバーするから、猫宮は前で拾って!」
涼の指示に従い、猫宮はネット際に立った。次のポイントで、涼が飛鳥のサーブを深く返し、美咲が前に出てきた瞬間、猫宮は反射的にボレーを放った。ボールが美咲の足元をかすめ、ポイントを取った。
「やった! 猫宮、ナイス!」
涼が駆け寄ってきて、ハイタッチをくれた。猫宮は息を切らしながら笑った。仲間と一緒に戦う感覚が、少しずつ体に染み込んでいた。
試合は6-4で負けたが、猫宮は初めて「試合が楽しい」と思えた。終わった後、飛鳥が近づいてきて、軽く肩を叩いた。
「猫宮、いいボレーだったよ。次はもっとやりにくい相手になるから、覚悟しな」
「はい、ありがとうございます!」
飛鳥の笑顔に、猫宮も笑い返した。チーム全体が、少しずつ一つになっていく気がした。
26それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:32:05.50ID:YAtSMp0Z0
練習後、涼と二人で帰り道を歩いている時、猫宮はふと思ったことを口にした。
「涼先輩、私、自分のテニスって何だろうって考えるんです。氷華先輩みたいに強くないし、涼先輩みたいに感覚が鋭いわけでもない。でも、仲間と一緒なら、頑張れる気がするんです」
その言葉に、涼は立ち止まって猫宮を見た。
「それが猫宮のテニスだよ。誰かを引っ張る力じゃなくて、誰かと一緒に走る力。私、猫宮とダブルスやってて、そう感じたんだ」
「私……そんな力あるんですか?」
「うん。あるよ。気づいてないだけだよ、猫宮」
涼の優しい声に、猫宮は目を潤ませそうになった。自分にそんな力があるなんて、初めて言われた。涙をこらえながら、小さく頷いた。
「ありがとう、涼先輩。私、もっと頑張ります」
「うん。一緒に頑張ろうね。地区予選、勝ち抜こう!」
二人は笑い合いながら、夕陽の中を歩き続けた。
27それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:32:16.58ID:YAtSMp0Z0
家に帰り、猫宮は姉のラケットを手に持った。弦を指で弾くと、かすかな音が響いた。
「お姉ちゃん、私、仲間と一緒にテニスしてるよ。自分のリズム、見つけられるかな」
窓の外では、夏の夜風がカーテンを揺らしていた。猫宮はその音を聞きながら、目を閉じた。芽吹という遠い存在が、頭の片隅にちらついていた。でも、今は仲間と一緒にいるこの時間が、何より大切に思えた。
地区予選まであと3週間。猫宮の小さな一歩が、また前に進んだ。
28それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:32:26.52ID:lwTdRHpi0
なんか時間の推移が雑
書き手の匙加減が見えてしまって少しうんざりする
29それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:32:33.51ID:YAtSMp0Z0
7月中旬、夏の暑さがピークを迎えていた。明星中学校のテニスコートでは、汗と笑顔が混じり合い、部員たちが地区予選に向けて最後の調整を進めていた。猫宮はラケットを手に、基礎練習に励んでいた。壁に向かってボールを打ち、返ってくるリズムに合わせて体を動かす。
「猫宮、もっと腰を落とせ! ボールに負けるな!」
顧問の声が飛んできた。猫宮は慌てて姿勢を直し、力を込めてボールを打った。だが、疲れが溜まっていたのか、ラケットの角度がずれてボールがコートの外に飛んでいく。
「う……またやっちゃった……」
猫宮が肩を落とすと、近くで練習していた涼が笑いながら近づいてきた。
「大丈夫だよ、猫宮。疲れてる時は誰だってミスるって。ちょっと休憩しようか」
涼に促され、猫宮はコートの脇に移動して水筒を取り出した。冷たい水を飲むと、少しだけ頭がすっきりした。でも、心の中にはモヤモヤが残っていた。
30それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:32:52.33ID:YAtSMp0Z0
休憩中、猫宮はコートの端に座り、部員たちの練習風景を眺めていた。氷華が力強いフォアハンドを打ち込む姿、飛鳥が軽快に動き回る姿、そして涼が的確にボールを返す姿。みんながキラキラしていて、自分だけが置いてかれている気がした。
「私、みんなみたいに上手くなれないのかな……」
その呟きを、通りかかった氷華が耳にした。彼女は立ち止まり、猫宮の隣に腰を下ろした。
「何だ、その顔? 弱気になってるのか?」
「え、氷華先輩……あの、私、最近ミスが多くて。みんなすごいのに、私だけ下手で……」
猫宮が俯くと、氷華は静かに息をついた。
「誰だって弱い部分はある。私だって、怪我した時はテニスやめようと思ったよ。でもさ、弱いままじゃ終わりたくなかった。だから続けた。お前はどうしたい?」
その言葉に、猫宮は目を上げた。氷華の瞳は真っ直ぐで、そこに迷いはなかった。
「私……やめたくないです。弱くても、テニスしたい」
「なら、それでいい。弱さは恥じゃない。それを認めて進むのが強さだよ」
氷華は立ち上がり、コートに戻っていった。猫宮はその背中を見ながら、胸のモヤモヤが少しだけ晴れるのを感じた。
31それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:33:16.53ID:YAtSMp0Z0
その日の練習後、顧問が部員たちを集めた。夕陽がコートを赤く染め、空気が少し涼しくなっていた。
「地区予選まであと2週間だ。明日から実戦形式の練習を増やす。お前ら、覚悟しろよ」
顧問の声に、部員たちが身を引き締めた。彼女は腕を組み、鋭い目で全員を見回した。
「地区予選を抜ければ、次は県大会だ。そこで勝ち進めば、桜乱と当たる可能性がある。芽吹がいるチームだ。油断するな」
「芽吹……」
猫宮が小さく呟くと、顧問が彼女に目を向けた。
「猫宮、お前、芽吹と戦いたいって言ってたな。あいつは怪物だぞ。それでもやる気はあるか?」
「はい……怖いですけど、逃げたくないです」
その答えに、顧問は一瞬驚いたように眉を上げ、それから小さく頷いた。
「いい返事だ。その気持ち、忘れるなよ」
解散後、涼が猫宮に近づいてきて、肩を軽く叩いた。
「猫宮、かっこいいこと言うじゃん。私も負けてられないね」
「涼先輩……私、頑張ります。一緒に地区予選、勝ちたいです」
「うん。一緒に頑張ろう!」
二人は笑い合い、コートを後にした。猫宮の心に、小さな決意が芽生えていた。
32それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:33:31.16ID:YAtSMp0Z0
翌日、実戦形式の練習が始まった。猫宮と涼のペア対、氷華と飛鳥のペア。試合が始まると、氷華の鋭いサーブが猫宮のコートに飛んできた。
「猫宮、右!」
涼の声に、猫宮は反射的に動いた。なんとかラケットに当てて返すが、飛鳥がすぐにスマッシュを決めてくる。序盤は圧倒され、ポイントを重ねられた。
「ごめんなさい、涼先輩……私、足引っ張っちゃって」
「いいよ、猫宮。焦らないで。自分のリズムでやろう!」
涼の言葉に、猫宮は深呼吸した。自分のリズム。ボールを打つたび聞こえる、あの音。目を閉じて、その感覚を思い出した。そして、次のポイントで動き始めた。
氷華のサーブが飛んできた瞬間、猫宮は一歩前に出た。ボールが来るタイミングに合わせてラケットを振り、鋭いリターンを放った。ボールが飛鳥の足元をかすめ、ポイントを取った。
「ナイス、猫宮!」
涼が叫び、猫宮は驚きながらも笑った。自分の弱さを受け入れ、そこから一歩踏み出す感覚。それが、ボールの向こう側にあった。
試合は6-3で負けたが、猫宮は前よりも多くのポイントを取れた。終わった後、氷華が近づいてきて、静かに言った。
「悪くないぞ、猫宮。次はもっとやりにくくしてやるからな」
「はい、負けません!」
猫宮が笑うと、氷華も小さく笑った。チーム全体が、少しずつ熱を帯びてきていた。
33それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:33:46.04ID:YAtSMp0Z0
夜、家で一人、猫宮は姉のラケットを手に持った。弦を指で弾くと、かすかな音が響いた。
「お姉ちゃん、私、弱いけど、仲間と一緒なら頑張れるよ。少しだけ、前に進めた気がする」
窓の外では、夏の夜空に星が瞬いていた。猫宮はその光を見ながら、目を閉じた。芽吹という名前が、頭の中で大きくなっていた。でも、今は仲間と一緒にいるこの時間が、猫宮を支えていた。
地区予選まであと2週間。猫宮の小さな決意が、また一歩前に進んだ。
34それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:34:12.72ID:YAtSMp0Z0
7月下旬、夏の暑さがピークを迎えていた。明星中学校のテニスコートでは、地区予選を1週間後に控え、部員たちが最後の追い込みに入っていた。汗と笑顔が響き合い、ボールを打つ音が絶え間なく鳴り響いていた。猫宮はラケットを手に、涼とペアを組んで模擬試合に挑んでいた。相手は飛鳥と美咲のペアで、試合は白熱していた。
「猫宮、前!」
涼の声に、猫宮はネット際に飛び出した。飛鳥のロブが上がった瞬間、彼女は跳び上がり、スマッシュを放った。ボールが美咲のコートに鋭く突き刺さり、ポイントを取った。
「やった! 猫宮、ナイススマッシュ!」
涼が駆け寄ってハイタッチをくれた。猫宮は息を切らしながら笑った。
「ありがとう、涼先輩。私、ちゃんと当たった……!」
「うん、タイミングバッチリだったよ。猫宮、頼もしくなってきたね」
涼の笑顔に、猫宮は胸が熱くなった。仲間と一緒に戦う感覚が、彼女に小さな自信を与えていた。
35それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:34:38.68ID:YAtSMp0Z0
試合は6-4で涼と猫宮のペアが勝った。試合後、コートの脇で水を飲みながら、飛鳥が近づいてきた。
「猫宮、いいスマッシュだったよ。あのタイミングで前に出るなんて、成長したね」
「え、ありがとうございます……飛鳥先輩にはまだまだですけど」
「謙遜するなって。私だって、最初はボールに当てるだけで精一杯だったよ」
飛鳥の優しい言葉に、猫宮は驚きながらも笑顔を返した。チーム全員が、少しずつ彼女を認め始めている気がした。
その様子を見ていた氷華が、静かに近づいてきた。
「お前ら、いいコンビだな。涼と猫宮なら、予選でも戦える」
「氷華先輩……ありがとうございます。私、頑張ります」
「頑張るだけじゃダメだ。勝てよ」
氷華の言葉は厳しかったが、その瞳には信頼が宿っていた。猫宮は小さく頷き、心の中で決意を固めた。
2025/03/01(土) 13:34:50.22ID:qH7zIblt0
後書きはまだ?
37それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:35:08.06ID:YAtSMp0Z0
練習後、顧問が部員たちを集めた。夕陽がコートをオレンジに染め、風が汗を冷やしていた。
「地区予選まであと1週間だ。明日から最終調整に入る。お前ら、ここまでよくやってきた。あとは本番で出すだけだ」
顧問の声に、部員たちが身を引き締めた。彼女は腕を組み、鋭い目で全員を見回した。
「予選を抜ければ、次は県大会だ。そこには強豪が揃ってる。特に桜乱の芽吹。あいつは別格だ。だが、倒せない相手じゃない。覚えておけ」
「芽吹……」
猫宮が小さく呟くと、顧問が彼女に目を向けた。
「猫宮、お前、芽吹の動画見てから何か変わったな。怖がってた目が、今は違う。何か感じたか?」
「はい……強くて怖いですけど、戦ってみたいって思うんです。氷華先輩や涼先輩と一緒なら、逃げないでいける気がして」
その答えに、顧問は一瞬目を細め、それから小さく笑った。
「いい目だ。その気持ち、試合で出せよ。お前ならできる」
顧問の言葉に、猫宮は胸が熱くなった。初めて、自分がここにいる意味を感じた瞬間だった。
38それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:35:21.82ID:YAtSMp0Z0
帰り道、涼と並んで歩きながら、猫宮はふと思ったことを口にした。
「涼先輩、私、最近思うんです。テニスって、一人じゃできないんだなって。仲間がいるから、私、頑張れるんです」
その言葉に、涼は立ち止まって猫宮を見た。
「うん、そうだね。ダブルスってさ、信頼が全てだよ。私、猫宮のこと信じてる。猫宮も私を信じてくれるよね?」
「はい……涼先輩がいてくれるから、私、前に出られるんです」
涼はにこりと笑い、猫宮の肩を軽く叩いた。
「じゃあ、予選でも一緒に戦おう。絶対勝とうね」
「はい、一緒に勝ちます!」
二人は笑い合い、夏の夕暮れの中を歩き続けた。猫宮の心に、仲間への信頼が根を張り始めていた。
39それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:35:36.21ID:YAtSMp0Z0
家に帰り、猫宮は姉のラケットを手に持った。弦を指で弾くと、かすかな音が部屋に響いた。
「お姉ちゃん、私、仲間と一緒に戦ってるよ。弱い私でも、みんながいてくれるから強くなれる気がする」
窓の外では、夏の夜風がカーテンを揺らしていた。猫宮はその音を聞きながら、目を閉じた。芽吹という名前が、頭の中で大きくなっていた。でも、今は仲間と立つコートが、彼女の全てだった。
その夜、猫宮はラケットを抱きしめたまま眠りについた。夢の中で、姉が優しく笑ってくれている気がした。
40それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:35:47.99ID:YAtSMp0Z0
翌日、練習の最後に顧問が部員たちに話しかけた。
「明日から予選直前の調整だ。お前ら、ここまでやってきたことを信じろ。私も昔、プロで結果を出せなかった時、最後まで信じたのは自分と仲間だけだった。それがテニスだ」
顧問の声に、部員たちが静かに耳を傾けた。彼女の瞳には、過去の悔しさと、今の希望が混じっていた。
「猫宮、お前、弱さを認めて進んでるな。それが強さだ。忘れるなよ」
「はい、顧問……ありがとうございます」
猫宮が頭を下げると、顧問は小さく頷いた。チーム全体が、一つの目標に向かって動き出していた。
地区予選まであと1週間。猫宮の信頼のコートが、彼女を支えていた。
41それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:36:09.67ID:YAtSMp0Z0
7月末、夏の陽射しが容赦なく照りつける日だった。明星中学校の女子テニス部は、地区予選の会場である市立体育館に到着していた。コートの周りは観客や他のチームで賑わい、緊張感が空気を重くしていた。猫宮はラケットを手に、涼と並んで初戦のコートに向かっていた。
「猫宮、緊張してる?」
涼が笑顔で尋ねると、猫宮は小さく頷いた。
「うん……初めての公式試合だから、心臓がバクバクしてる」
「大丈夫だよ。私も最初はそうだったけど、コートに立てば忘れちゃうから。猫宮ならやれるよ」
涼の言葉に、猫宮は深呼吸して頷いた。彼女の手を握るラケットが、少し汗ばんでいた。
42それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:36:44.04ID:YAtSMp0Z0
初戦の相手は、隣町の緑ヶ丘中学校。ダブルスのペアは、2年生の佐藤と1年生の田中のコンビだった。顧問が試合前に部員たちを集め、最後の指示を出した。
「緑ヶ丘は基礎がしっかりしてるチームだ。派手さはないが、ミスが少ない。お前ら、自分のテニスを信じて戦え。特に猫宮と涼、ダブルスは信頼が鍵だ。忘れるな」
「はい!」
猫宮と涼が声を揃えると、顧問は小さく頷いた。氷華が静かにコート脇に立ち、他の部員たちも応援の準備を始めた。
試合開始の笛が鳴り、猫宮と涼がコートに立った。観客席から聞こえるざわめきに、猫宮の胸がさらに高鳴った。
「猫宮、私がサーブから行くよ。リズムに乗ってこう!」
涼の声に、猫宮は頷き、ネット際にポジションを取った。涼のサーブが鋭く放たれ、佐藤がなんとか返す。ボールが猫宮の前に来た瞬間、彼女は反射的にボレーを放った。だが、力が入りすぎてネットに引っかかった。
「ごめん、涼先輩……!」
「いいよ、最初はそんなもんだから。次、次!」
涼の明るい声に、猫宮は気持ちを切り替えた。次のポイントで、涼のサーブが田中のコートに深く入り、返ってきたボールを猫宮が落ち着いてロブで返した。佐藤がミスを犯し、ポイントを取った。
「ナイス、猫宮! その調子!」
涼の笑顔に、猫宮も笑った。緊張が少しずつ解け、自分のリズムが戻ってくる気がした。
43それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:37:01.91ID:YAtSMp0Z0
試合はシーソーゲームになった。緑ヶ丘の佐藤と田中は確かにミスが少なく、粘り強いラリーを展開してきた。猫宮は序盤、動きが硬くミスを重ねたが、涼のカバーが彼女を支えた。
「猫宮、右!」
涼の指示に、猫宮は右に飛びついた。佐藤のショットをなんとか拾い、涼がスマッシュで仕留める。ポイントが決まり、観客席から拍手が起きた。
「涼先輩、すごい……!」
「猫宮の返しが良かったからだよ。一緒に取ったポイントだね」
涼の言葉に、猫宮は胸が熱くなった。信頼が、コートの中で形になっていく。
ゲームは4-4で拮抗し、最後のゲームに突入した。涼のサーブで始まり、猫宮がネット際に立つ。佐藤の返球が飛んできた瞬間、猫宮は深呼吸して自分のリズムを思い出した。そして、鋭いボレーを放った。ボールが田中の足元をかすめ、ネット際に落ちた。
「ゲームセット! 明星中、6-4!」
審判の声に、猫宮と涼は同時に歓声を上げた。抱き合って喜びを分かち合い、コート脇で待つ部員たちに駆け寄った。
「猫宮、涼、よくやった!」
飛鳥が笑顔で迎え、氷華が静かに頷いた。顧問が近づいてきて、珍しく口元を緩めた。
「初戦突破だ。猫宮、緊張してたわりには粘ったな。涼とのコンビ、悪くないぞ」
「ありがとうございます……!」
猫宮は汗と涙で顔を濡らしながら、笑った。初めての公式戦での勝利。それが、仲間と一緒だったからこその結果だと感じていた。
44それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:37:22.31ID:YAtSMp0Z0
試合後、体育館の外で部員たちが休憩していた。猫宮は水を飲みながら、涼と並んで座っていた。
「涼先輩、私、試合中ずっと緊張してたけど、最後は楽しかったよ。一緒に戦えて、嬉しかった」
「私もだよ。猫宮がいてくれるから、私も頑張れた。信頼ってこういうことだね」
涼の優しい声に、猫宮は頷いた。コートに立った瞬間、仲間がいることがどれだけ力になるかを実感した。
その時、氷華が近づいてきて、静かに言った。
「次はもっと強い相手だ。気を抜くなよ。だが、お前らならやれる」
「はい、氷華先輩!」
猫宮が元気に返すと、氷華は小さく笑った。チーム全体が、勝利の喜びで一つになっていた。
45それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:37:38.16ID:YAtSMp0Z0
帰り道、顧問が部員たちに話しかけた。
「初戦はいいスタートだ。だが、ここからが本番だ。県大会には桜乱がいる。芽吹がいる。今日の勝ちを自信にしろ。お前らなら、もっと上に行ける」
顧問の声に、猫宮は胸を高鳴らせた。芽吹という名前が、遠くで響いていた。でも、今は目の前の勝利が、彼女を支えていた。
家に帰り、猫宮は姉のラケットを手に持った。弦を指で弾くと、かすかな音が響いた。
「お姉ちゃん、私、仲間と一緒に勝ったよ。少しだけ、強くなれた気がする」
窓の外では、夏の夜空に星が瞬いていた。猫宮はその光を見ながら、目を閉じた。地区予選の初戦を突破したこの日が、彼女の新しい一歩だった。
46それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:38:15.49ID:YAtSMp0Z0
7月末、地区予選2日目。明星中学校の女子テニス部は、市立体育館のコートに再び集まっていた。初戦の勝利から一夜明け、部員たちの間に静かな自信と緊張が混じり合っていた。猫宮はラケットを手に、涼と並んで2回戦の準備をしていた。
「猫宮、昨日勝ったからって気を抜かないでね。今日の相手、結構強いよ」
涼が軽い口調で言うと、猫宮は少し緊張した顔で頷いた。
「うん……わかってる。涼先輩と一緒なら、頑張れるよ」
「うん、私も猫宮と一緒なら負けないよ。一緒に勝とう!」
涼の笑顔に、猫宮も小さく笑った。初戦の勝利が、彼女に小さな勇気を与えていた。
47それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:38:30.81ID:YAtSMp0Z0
2回戦の相手は、松原中学校。ダブルスのペアは、3年生の山本と2年生の高橋のコンビだった。顧問が試合前に部員たちを集め、相手の特徴を伝えた。
「松原は攻撃的なチームだ。特に山本はスマッシュが得意で、高橋はネット際の動きが速い。お前ら、冷静にラリーを続けて隙を見つけろ。猫宮と涼、初戦の感覚を思い出せ」
「はい!」
猫宮と涼が声を揃えると、顧問は鋭い目で頷いた。氷華がコート脇でラケットを手に持ち、他の部員たちが応援席に陣取った。
試合開始の笛が鳴り、猫宮と涼がコートに立った。観客席のざわめきが耳に入り、猫宮の胸が再び高鳴った。
「猫宮、私がサーブから行くよ。落ち着いてね!」
涼の声に、猫宮は頷き、ネット際にポジションを取った。涼のサーブが鋭く放たれ、高橋が素早く返す。ボールが猫宮の前に来た瞬間、彼女は深呼吸してボレーを放った。ボールがネットを越え、山本が拾うも、涼がすぐにロブで返す。山本が跳び上がり、スマッシュを放った。
「猫宮、下がって!」
涼の指示に、猫宮は慌てて後退し、なんとかボールを拾った。だが、返球が弱く、高橋がネット際で決められ、ポイントを失った。
「ごめん、涼先輩……!」
「大丈夫、次だよ! 焦らないで!」
涼の明るい声に、猫宮は気持ちを切り替えた。初戦と同じように、信頼が彼女を支えていた。
48それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:38:58.02ID:YAtSMp0Z0
試合は序盤、松原のペースで進んだ。山本の強烈なスマッシュと、高橋の素早いネットプレーが猫宮と涼を圧倒した。スコアは2-4で松原がリード。猫宮は息を切らしながら、自分のミスに苛立っていた。
「私がもっとちゃんと返せれば……」
その時、コート脇から氷華の声が聞こえた。
「猫宮、頭使え! 相手の動き見て、冷静にやれ!」
氷華の鋭い言葉に、猫宮はハッとした。冷静に。自分のリズムで。涼と一緒に戦う感覚を思い出し、目を閉じて息を整えた。
次のゲーム、涼のサーブから再開。山本が返すボールが猫宮の前に来た瞬間、彼女は一歩前に出て、鋭いドロップショットを放った。ボールがネット際に落ち、高橋が間に合わずポイントを取った。
「ナイス、猫宮! その調子!」
涼が叫び、観客席から拍手が起きた。猫宮は笑顔で頷き、次のポイントに集中した。山本のスマッシュが飛んできた瞬間、涼が「下がって!」と指示を出し、猫宮が深く返球。涼がネット際で決め、連続ポイントを奪った。
「やった! 涼先輩と一緒なら、やれる!」
猫宮の声に、涼がウインクした。スコアは4-4に追いつき、試合は終盤戦へ。
49それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:39:15.48ID:YAtSMp0Z0
最終ゲーム、緊張感がコートを包んだ。涼のサーブが決まり、高橋が返す。長いラリーが続き、猫宮は山本の動きを目で追った。スマッシュの予兆を感じ、素早く下がってボールを拾う。涼がロブを上げ、山本が再びスマッシュを狙った瞬間、猫宮は反射的に前に出て、ボレーを放った。ボールが山本の足元をかすめ、コートに落ちた。
「ゲームセット! 明星中、6-4!」
審判の声に、猫宮と涼は同時に歓声を上げた。抱き合って喜びを分かち合い、コート脇に駆け寄った。
「猫宮、涼、よくやったぞ!」
飛鳥が笑顔で迎え、氷華が静かに言った。
「悪くない。最後のボレー、頭使えてたな」
「ありがとうございます、氷華先輩!」
猫宮が笑うと、顧問が近づいてきた。
「2回戦突破だ。猫宮、動きが良くなってる。涼との息も合ってきたな。これなら、県大会まで行けるぞ」
「はい……ありがとうございます!」
猫宮は汗だくの顔で笑った。2試合目の勝利が、彼女にまた一歩の自信を与えていた。
50それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:39:34.47ID:YAtSMp0Z0
試合後、体育館の外で部員たちが休憩していた。猫宮は水を飲みながら、涼と並んで座っていた。
「涼先輩、私、試合中ずっと怖かったけど、最後は冷静になれたよ。氷華先輩の声が頭に残ってて……」
「うん、氷華の言う通りだよ。猫宮、最後頭使えてた。信頼って、こういう時に活きるんだね」
涼の言葉に、猫宮は頷いた。仲間がいるから、冷静に戦えた。自分一人じゃ絶対に勝てなかった試合だった。
その時、顧問が部員たちに話しかけた。
「次は準決勝だ。ここからが正念場だ。県大会には桜乱がいる。芽吹がいる。あいつらに勝つには、もっと強くなれ。お前らならできる」
顧問の声に、猫宮は胸を高鳴らせた。芽吹という名前が、遠くで響いていた。でも、今は目の前の勝利が、彼女を支えていた。
51それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:39:52.33ID:YAtSMp0Z0
家に帰り、猫宮は姉のラケットを手に持った。弦を指で弾くと、かすかな音が響いた。
「お姉ちゃん、私、2回戦も勝ったよ。仲間と一緒なら、怖くても前に進めるんだ」
窓の外では、夏の夜風がカーテンを揺らしていた。猫宮はその音を聞きながら、目を閉じた。地区予選の2回戦を突破したこの日が、彼女の二歩目の挑戦だった。
52それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:40:08.90ID:YAtSMp0Z0
7月末、地区予選3日目。明星中学校の女子テニス部は、市立体育館のコートで準決勝を迎えていた。2回戦までの勝利で、部員たちの間に自信が芽生えていたが、同時に緊張感も高まっていた。猫宮はラケットを手に、涼と並んでコートに向かっていた。
「猫宮、準決勝だよ。ちょっと緊張してきたね」
涼が笑いながら言うと、猫宮も小さく笑った。
「私も……でも、涼先輩と一緒なら大丈夫だよね?」
「うん、一緒なら何とかなるよ。落ち着いてやろう!」
涼の明るい声に、猫宮は頷いた。2試合を勝ち抜いた自信が、彼女の背中をそっと押していた。
53それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:40:24.15ID:YAtSMp0Z0
準決勝の相手は、強豪の西山中学校。ダブルスのペアは、3年生の林と2年生の岡田のコンビだった。顧問が試合前に部員たちを集め、相手の特徴を伝えた。
「西山は県大会常連だ。林はパワーがあって、岡田は頭を使ったプレーが得意。ラリーが長くなるぞ。お前ら、冷静に自分のテニスをやれ。猫宮と涼、ここまで来たんだ。信じ合えよ」
「はい!」
猫宮と涼が声を揃えると、顧問は鋭い目で頷いた。氷華がコート脇で静かに立ち、他の部員たちが応援席に陣取った。
試合開始の笛が鳴り、猫宮と涼がコートに立った。観客席のざわめきが大きくなり、猫宮の胸がドキドキした。
「猫宮、私がサーブから行くよ。自分のリズムでね!」
涼の声に、猫宮は頷き、ネット際にポジションを取った。涼のサーブが放たれ、岡田が素早く返す。ボールが猫宮の前に来た瞬間、彼女は冷静にボレーを放った。ボールがネットを越え、林が力強く打ち返してきた。涼がカバーし、ロブを上げるが、林が跳び上がり、スマッシュを決めた。
「ごめん、涼先輩……!」
「大丈夫、次だよ! 焦らないで!」
涼の声に、猫宮は気持ちを落ち着けた。信頼が、彼女をコートに立たせていた。
54それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:40:26.57ID:uh7hqkWcM
>雨の音が遠くで聞こえていた。教室の窓から見える校庭は薄暗く、放課後の静けさに包まれていた。中学3年生の春、猫宮は机に突っ伏して、ぼんやりと外を眺めていた。
>彼女の小さな手には、使い込まれたテニスラケットが握られていた。グリップテープは擦り切れ、弦は少し緩んでいる。それでも、猫宮にとっては大切なものだった。


ここからもうセンスない
窓が見える位置にいるのに雨の音が遠くに聞こえるって矛盾してるし
放課後の静けさに包まれているって雨音が聞こえてるってさっき言ってたばかり
最初に名を出すときとは性だけでなく姓名を書くべき
机に突っ伏してるのに手にはテニスラケット握ってるってどういう状況
ラケットの手入れしてないと書いた直ぐ後に大切なものって正反対の説明を入れるのも変な話
試合するしないに関わらずラケットが大切なものなら手入れはしてるのが道理
55それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:40:43.13ID:YAtSMp0Z0
試合は序盤から厳しい展開になった。林のパワフルなショットと、岡田の頭脳的なポジショニングが猫宮と涼を圧倒した。スコアは1-3で西山がリード。猫宮は息を切らしながら、自分の動きに迷いが生じていた。
「私がもっと冷静になれれば……」
その時、コート脇から氷華の声が響いた。
「猫宮、相手を見て動け! お前ならやれるだろ!」
氷華の言葉に、猫宮はハッとした。冷静に。自分のリズムで。涼と一緒に戦う感覚を思い出し、深呼吸した。
次のゲーム、涼のサーブから再開。林が返すボールが猫宮の前に来た瞬間、彼女は相手の動きを目で追った。岡田がネット際に詰めるのを見て、ドロップショットを放った。ボールがネット際に落ち、岡田が間に合わずポイントを取った。
「ナイス、猫宮! その調子だよ!」
涼が叫び、観客席から拍手が起きた。猫宮は笑顔で頷き、次のポイントに集中した。林のスマッシュが飛んできた瞬間、涼が「下がって!」と指示を出し、猫宮が深く返球。涼がネット際で決め、連続ポイントを奪った。
「涼先輩と一緒なら、やれる!」
猫宮の声に、涼が笑った。スコアは3-3に追いつき、試合は中盤戦へ。
56それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:41:10.00ID:YAtSMp0Z0
後半、試合はさらに白熱した。林と岡田のコンビネーションが冴え、長いラリーが続いた。猫宮は疲れを感じながらも、涼の声を頼りに動いた。
「猫宮、左!」
涼の指示に、猫宮は左に飛びついた。岡田のショットを拾い、涼がロブで返す。林がスマッシュを狙った瞬間、猫宮は反射的に前に出て、ボレーを放った。ボールが林の足元をかすめ、コートに落ちた。
「ポイント、明星中!」
審判の声に、猫宮と涼は歓声を上げた。スコアは5-4で明星がリード。最終ゲーム、涼のサーブが決まり、長いラリーが続いた。猫宮は林の動きを読み、冷静にボールを返した。最後、岡田の返球がネットに引っかかり、試合が決まった。
「ゲームセット! 明星中、6-4!」
審判の声に、猫宮と涼は抱き合って喜んだ。コート脇に駆け寄ると、飛鳥が笑顔で迎えた。
「猫宮、涼、すごい試合だったよ!」
氷華が近づいてきて、静かに言った。
「よくやった。最後まで冷静だったな、猫宮」
「ありがとうございます、氷華先輩!」
猫宮が笑うと、顧問が歩み寄ってきた。
「準決勝突破だ。猫宮、強かったぞ。涼とのコンビ、ここまで来て形になってきたな。次は決勝だ。気を抜くな」
「はい……ありがとうございます!」
猫宮は汗と涙で顔を濡らしながら、笑った。準決勝の壁を乗り越えた喜びが、彼女に大きな自信を与えていた。
57それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:41:24.53ID:gADPp/LU0
感想が欲しいならカクヨムに出も投稿した方がええで
58それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:41:28.64ID:YAtSMp0Z0
試合後、体育館の外で部員たちが休憩していた。猫宮は水を飲みながら、涼と並んで座っていた。
「涼先輩、私、準決勝でも冷静でいられたよ。氷華先輩の言葉が頭にあって、仲間がいるから頑張れた」
「うん、猫宮、ほんと頼もしくなったよ。私も猫宮がいてくれるから、安心して戦えた。一緒に勝てて嬉しい」
涼の言葉に、猫宮は頷いた。仲間との信頼が、大きな壁を越えさせてくれた。
その時、顧問が部員たちに話しかけた。
「決勝まで来たぞ。次勝てば、県大会だ。そこには桜乱がいる。芽吹がいる。あいつらに勝つには、もっと強くなれ。お前らなら、やれるはずだ」
顧問の声に、猫宮は胸を高鳴らせた。芽吹という名前が、遠くで響いていた。でも、今は仲間と一緒に勝ち進むこの瞬間が、彼女を支えていた。
59それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:41:43.14ID:uh7hqkWcM
文才がないってのは悲しい話やね
60それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:41:45.25ID:YAtSMp0Z0
家に帰り、猫宮は姉のラケットを手に持った。弦を指で弾くと、かすかな音が響いた。
「お姉ちゃん、私、準決勝も勝ったよ。仲間と一緒なら、どんな壁でも越えられる気がする」
窓の外では、夏の夜空に星が瞬いていた。猫宮はその光を見ながら、目を閉じた。地区予選準決勝を突破したこの日が、彼女の新たな一歩だった。
61それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:42:05.90ID:YAtSMp0Z0
7月末、地区予選最終日。明星中学校の女子テニス部は、市立体育館のメインコートで決勝戦を迎えていた。準決勝までの勝利で、部員たちの間に強い結束力が生まれていたが、決勝の重圧もまた大きかった。猫宮はラケットを手に、涼と並んでコートに向かっていた。
「猫宮、決勝だよ。ここまで来たんだから、絶対勝とうね」
涼が笑顔で言うと、猫宮は少し緊張した顔で頷いた。
「うん……涼先輩と一緒なら、勝てるよね?」
「うん、一緒なら絶対勝てるよ。私、猫宮のこと信じてるから」
涼の言葉に、猫宮は深呼吸して笑った。3試合を勝ち抜いた自信が、彼女の胸を温かくしていた。
62それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:42:22.36ID:YAtSMp0Z0
決勝の相手は、強豪の東海中学校。ダブルスのペアは、3年生の斎藤と3年生の藤田のコンビだった。顧問が試合前に部員たちを集め、相手の特徴を伝えた。
「東海は地区トップクラスのチームだ。斎藤はスピードがあって、藤田は正確なコントロールが武器。簡単には勝てないぞ。お前ら、ここまでやってきたことを全部出せ。猫宮と涼、信頼を形にしろ」
「はい!」
猫宮と涼が声を揃えると、顧問は鋭い目で頷いた。氷華がコート脇でラケットを手に持ち、他の部員たちが観客席に集まった。応援の声が響き合い、コートの空気が熱を帯びていた。
試合開始の笛が鳴り、猫宮と涼がコートに立った。観客席が一段とざわつき、猫宮の心臓が激しく打った。
「猫宮、私がサーブから行くよ。自分のリズムで戦おう!」
涼の声に、猫宮は頷き、ネット際にポジションを取った。涼のサーブが鋭く放たれ、斎藤が素早く返す。ボールが猫宮の前に来た瞬間、彼女は冷静にボレーを放った。ボールがネットを越え、藤田が正確に打ち返してきた。涼がカバーし、ロブを上げるが、斎藤が素早くスマッシュを決めた。
「ごめん、涼先輩……!」
「大丈夫、次だよ! 一緒にやろう!」
涼の明るい声に、猫宮は気持ちを切り替えた。仲間との約束が、彼女を奮い立たせていた。
63それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:42:26.52ID:0azM3F7a0
文末が「た。」で終わりすぎやろ
64それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:42:46.53ID:YAtSMp0Z0
試合は序盤から激しい展開になった。斎藤のスピードと藤田のコントロールが、猫宮と涼を追い詰めた。スコアは2-3で東海がリード。猫宮は息を切らしながら、自分の動きに焦りを感じていた。
「私がもっとしっかりしないと……」
その時、コート脇から氷華の声が響いた。
「猫宮、落ち着け! お前ならやれる! 仲間を信じろ!」
氷華の言葉に、猫宮はハッとした。自分のリズムで。涼と一緒に戦う感覚を思い出し、目を閉じて息を整えた。
次のゲーム、涼のサーブから再開。斎藤が返すボールが猫宮の前に来た瞬間、彼女は相手の動きを目で追った。藤田がネット際に詰めるのを見て、ドロップショットを放った。ボールがネット際に落ち、藤田が間に合わずポイントを取った。
「ナイス、猫宮! その調子だよ!」
涼が叫び、観客席から大きな拍手が起きた。猫宮は笑顔で頷き、次のポイントに集中した。斎藤のスマッシュが飛んできた瞬間、涼が「下がって!」と指示を出し、猫宮が深く返球。涼がネット際で決め、連続ポイントを奪った。
「涼先輩と一緒なら、絶対勝てる!」
猫宮の声に、涼が笑った。スコアは4-3で明星が逆転し、試合は終盤へ。
65それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:43:05.95ID:YAtSMp0Z0
最終ゲーム、緊張感がコートを包んだ。涼のサーブが決まり、長いラリーが続いた。猫宮は斎藤の動きを読み、冷静にボールを返した。藤田がコントロールショットで揺さぶってきたが、涼が素早くカバー。最後、斎藤の返球がネットを越えた瞬間、猫宮は前に出て、鋭いボレーを放った。ボールが藤田の足元をかすめ、コートに落ちた。
「ゲームセット! 明星中、6-4!」
審判の声に、猫宮と涼は同時に歓声を上げた。抱き合って喜びを分かち合い、コート脇に駆け寄った。観客席から大きな拍手と歓声が沸き起こり、部員たちが一斉に立ち上がった。
「猫宮、涼、優勝だよ!」
飛鳥が笑顔で迎え、氷華が静かに言った。
「よくやった。最後まで諦めなかったな、猫宮」
「ありがとうございます、氷華先輩!」
猫宮が笑うと、顧問が歩み寄ってきた。
「地区予選優勝だ。猫宮、涼、最高の試合だった。信頼が形になったな。次は県大会だ。気を抜くなよ」
「はい……ありがとうございます!」
猫宮は汗と涙で顔を濡らしながら、笑った。決勝戦の勝利が、彼女に大きな自信と誇りを与えていた。
66それでも動く名無し
垢版 |
2025/03/01(土) 13:43:06.56ID:ncqBgerP0
部活動と家の部屋しか場面なくて草
スポコン漫画でももう少し他の場面あるやろ
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
5ちゃんねるの広告が気に入らない場合は、こちらをクリックしてください。