日本野球の威信をかけた戦いが待ち受ける。侍の攻守のカギを握る男は、こう打ち明ける。

「栗山監督に『命をかけて戦っていく中で、拓也の力をぜひ貸してほしい』と言っていただいた」

 昨年、シーズン全日程の終了直後にかけられた言葉だった。

「遠慮なく考えや思っていること、気づいたことを言ってきてくれと。チームの雰囲気がどうとか、試合の流れがどうとか、どんどん言ってきてほしいと。『チームが勝つために、俺は拓也の意見が必要だと思っている』とまで言っていただいた。その思いを聞いて、世界一の監督になってもらいたいと素直に思った」

 栗山監督は、これまでの代表活動における甲斐の実績と、国際試合で重要となる洞察力を高く評価。いち早くチーム構想の中心に据え、絶大な信頼を伝えることで、抜かりない準備を促した。今回のWBCには、他国と同様に日本もメジャー組を招集。ダルビッシュ、大谷らが早期に参戦意思を示したことは、甲斐にとっても大きかったはずだ。

 この日の自主トレでは、新たな取り組みも公開。メジャーなどで注目されているフレーミング技術の向上を目指した練習だった。際どいコースの球をストライクにする確率を上げる捕球技術で「メジャーでは当たり前になっていて、投手を助けられる」と意図を語る。

 念頭にはもちろんダルビッシュ、大谷の快投を引き出す狙いがある。「WBCのこともあるんで。いい投球をしてもらえるように。自分の技術を見返した時に、身につけないといけないと思った」。NPB組にも動く球を武器とする投手が増えている。国際試合での審判の傾向もある。侍の常連らしく頼もしかった。

「栗山さんと勝つために。このWBC、僕は頑張ります」。3大会ぶりの世界一へ、侍の命運を握る覚悟はできている。

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