なんでもおまんこ   谷川俊太郎
 
なんでもおまんこなんだよ
あっちに見えてるうぶ毛の生えた丘だってそうだよやれたらやりてえんだよ
おれ空に背がとどくほどでっかくなれねえかなすっぱだかの巨人だよ
でもそうなったら空とやっちゃうかもしれねえな空だって色っぽいよお
晴れてたって曇ってたってぞくぞくするぜ
空なんか抱いたらおれすぐいっちゃうよどうにかしてくれよ
そこに咲いてるその花とだってやりてえよ
形があれに似てるなんてそんなせこい話じゃねえよ花ん中へ入っていきたくってしょうがねえよ
あれだけ入れるんじゃねえよおちっこくなってからだごとぐりぐり入っていくんだよお
どこ行くと思う?わかるはずねえだろそんなこと
蜂がうらやましいよおああたまんねえ
風が吹いてくるよお風とはもうやってるも同然だよ頼みもしないのにさわってくるんだ
そよそよそよそようまいんだよさわりかたが女なんかめじゃねえよお
ああ毛が立っちゃうどうしてくれるんだよお
おれのからだおれの気持ち
溶けてなくなっちゃいそうだよおれ地面掘るよ
土の匂いだよ水もじゅくじゅく湧いてくるよおれに土かけてくれよお草も葉っぱも虫もいっしょくたによおでもこれじゃまるで死んだみたいだなあ笑っちゃうよ
おれ死にてえのかなあ